魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
 レナールの鋭い質問に、アリーセははじかれるようにレナールの方を見た。
 レナールの蒼い瞳がアリーセにまっすぐに向けられている。その視線はどこかアリーセを非難しているようにも感じられて、アリーセはひるんだ。

「何故、そんなことを?」

 アリーセの声がわずかに震える。
 本心のつもりだった。だって、アリーセは贖罪をしなければならないから。

「ラウフェンが魔法使いにとって非常に住みにくい国であることを知っているからです。ああ。ラウフェンでは男女問わず魔女と言うんでしたね」

 きっぱりと述べるレナールの端正な顔には、はっきりと嫌悪感が浮かんでいた。
 隣のユーグも苦笑している。

「彼は君に怒っているわけじゃないから安心して。ラウフェンの魔法使いに対する扱いは有名だから、思うところがあるんだろう。僕としてもさっきはああ言ったけど、ピリエに残ることを考えてほしいかな。もちろん、君にも君の事情があるだろうから、無理強いはしない。でも、これだけは言っておく。我が国は魔法使いに対する待遇は手厚いよ。ラウフェンからも魔法使いが移住してきた実績もある」

 ユーグの話の中にアリーセにとって聞き逃せない言葉があった。

「ラウフェンに、私の他にも魔女がいたんですか?」

 てっきりラウフェンに他に魔女はいないのかと思っていた。だって、今、贖罪をしているのはアリーセだけだったから。
 ユーグは新緑の目をぱちぱちさせた。

「そりゃあいるよ。だいたい世界の人口の一割くらいが魔力を持っていて、その半数程度は魔法を使えると言われているんだから。ピリエで魔法使いの移住政策を始めたのは三十年くらい前からだけれど、ラウフェンからの移住が一番多いかな」

 ――ラウフェンに他に魔女もいた。
 それはアリーセにとって衝撃的な事実だった。
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