魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
「ロストがあるのはこの小屋の中です」
馬車から降りたマルクが指したのは、平屋の割に高さがある古い木造の小屋だった。壁のあちこちに修繕している箇所がある。
周囲にはあまり建物がなく、どこか元気がない畑が広がっている。干上がっているのか、土がひび割れている箇所もあった。こうして目の当たりにすると胸に迫る。
マルクが小屋の扉の鍵を開ける。
窓が小さいので入ってくる光が少なく薄暗い。そんな空間の中央に、大きな正方形の石がどんと構えていた。この前みた温室のロストと高さは同じくらいだが、横に広い。
ロストが最初にあり、雨風をよけるためにあとで建物が作られたのだろう。
「かなり大きいですね」
レナールが感心したように言う。マルクはそんなレナールの反応が意外だったらしい。
「そうなんですか? 私はこれ以外のロストを見たことがないので、これが普通だと思っていました」
「大きいですよ。私の知る限り、最大クラスです。効果を考えれば当然かもしれません。最後にメンテナンスした記録は残っていますか?」
「父によると二十年ほど前に一度。そのときも小雨でこのロストを動けばと思って王宮魔法使いを呼んだそうです。ですが――」
マルクが言葉を濁す。
「結局使えなかった」
「そうです。そのときは自然に雨が降ってくれて助かったのですが」
既にロストが使えなかった記録が残っている。これは、既に魔法回路が瘴気でだめになっている可能性は高そうだ。
レナールはある程度予想していたのか表情を動かさずに言った。
「ありがとうございます。――作業に入ってもよろしいでしょうか?」
「ええ。もちろんです。よろしくお願いします」
マルクは頭を下げる。それから「素人は邪魔をしない方がいいですよね」と小屋を出て行った。周辺の土地の様子を見に行くのだという。
アリーセがこれから浄化魔法を使う可能性を考えると、ありがたい申し出だった。
馬車から降りたマルクが指したのは、平屋の割に高さがある古い木造の小屋だった。壁のあちこちに修繕している箇所がある。
周囲にはあまり建物がなく、どこか元気がない畑が広がっている。干上がっているのか、土がひび割れている箇所もあった。こうして目の当たりにすると胸に迫る。
マルクが小屋の扉の鍵を開ける。
窓が小さいので入ってくる光が少なく薄暗い。そんな空間の中央に、大きな正方形の石がどんと構えていた。この前みた温室のロストと高さは同じくらいだが、横に広い。
ロストが最初にあり、雨風をよけるためにあとで建物が作られたのだろう。
「かなり大きいですね」
レナールが感心したように言う。マルクはそんなレナールの反応が意外だったらしい。
「そうなんですか? 私はこれ以外のロストを見たことがないので、これが普通だと思っていました」
「大きいですよ。私の知る限り、最大クラスです。効果を考えれば当然かもしれません。最後にメンテナンスした記録は残っていますか?」
「父によると二十年ほど前に一度。そのときも小雨でこのロストを動けばと思って王宮魔法使いを呼んだそうです。ですが――」
マルクが言葉を濁す。
「結局使えなかった」
「そうです。そのときは自然に雨が降ってくれて助かったのですが」
既にロストが使えなかった記録が残っている。これは、既に魔法回路が瘴気でだめになっている可能性は高そうだ。
レナールはある程度予想していたのか表情を動かさずに言った。
「ありがとうございます。――作業に入ってもよろしいでしょうか?」
「ええ。もちろんです。よろしくお願いします」
マルクは頭を下げる。それから「素人は邪魔をしない方がいいですよね」と小屋を出て行った。周辺の土地の様子を見に行くのだという。
アリーセがこれから浄化魔法を使う可能性を考えると、ありがたい申し出だった。