魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
作業開始。まずは魔法回路の確認からだ。
「魔法回路がある場所はロストによって違うが、だいたい側面にあることが多い。メンテナンスがしやすいからな。これも……側面にあるようだ」
レナールは、アリーセに説明をしながら手袋をした手でロストの表面を触る。魔法回路がある場所は外せるように溝が入っているのだ。
レナールは魔法回路を隠している石の板を外す。大きなものなのでアリーセも外すのを手伝った。板が倒れないように立てかけておく。
「……これは」
魔法回路を見てレナールが呟いた。
(このままだとこのロストは使えない)
アリーセのような素人にも一目でわかる。
マルクの証言から予想していたことだが、魔法回路は黒ずんでいた。魔力を流しても光りそうにないほど曇っている。
「二十年前にはこの状態だった可能性が高そうだ。……一応測るか」
レナールはそういいながらも、ペン型の計測器を魔法回路に押し当てる。
表れた数値は百十五だった。
「百以上になるんですね」
「あくまで瘴気の濃さを表しているからな。魔法回路がこの状態では起動は無理だ」
厳しい顔で魔法回路を見つめていたレナールが、ふいにアリーセに声をかけた。
「アリーセ。君はどうしたい?」
「――え?」
「君が浄化魔法を使えば、このロストを使えるようになるだろう。だが、その分、君の力が広まる可能性も高い。二十年前に一度王宮魔法使いを呼んだ記録があるだろう。そのときの担当魔法使いが現役なら、このロストがあり得ない復活をしたことに気づく」
現時点で、瘴気から復活させる方法は一つ。聖属性の魔法。
ロストが復活したとき、今更レナールが聖属性の持ち主だと思う人間はいないだろう。となると、消去法でアリーセが聖女だということになる。
それでも。
「――浄化魔法を使います」
アリーセは迷わずに答えた。レナールがすぐに問い返す。
「君が聖女であることが広まることによって、危険が及ぶかもしれなくても?」
「はい。――雨を待っている人たちのためにも、お役に立ちたいです」
「魔法回路がある場所はロストによって違うが、だいたい側面にあることが多い。メンテナンスがしやすいからな。これも……側面にあるようだ」
レナールは、アリーセに説明をしながら手袋をした手でロストの表面を触る。魔法回路がある場所は外せるように溝が入っているのだ。
レナールは魔法回路を隠している石の板を外す。大きなものなのでアリーセも外すのを手伝った。板が倒れないように立てかけておく。
「……これは」
魔法回路を見てレナールが呟いた。
(このままだとこのロストは使えない)
アリーセのような素人にも一目でわかる。
マルクの証言から予想していたことだが、魔法回路は黒ずんでいた。魔力を流しても光りそうにないほど曇っている。
「二十年前にはこの状態だった可能性が高そうだ。……一応測るか」
レナールはそういいながらも、ペン型の計測器を魔法回路に押し当てる。
表れた数値は百十五だった。
「百以上になるんですね」
「あくまで瘴気の濃さを表しているからな。魔法回路がこの状態では起動は無理だ」
厳しい顔で魔法回路を見つめていたレナールが、ふいにアリーセに声をかけた。
「アリーセ。君はどうしたい?」
「――え?」
「君が浄化魔法を使えば、このロストを使えるようになるだろう。だが、その分、君の力が広まる可能性も高い。二十年前に一度王宮魔法使いを呼んだ記録があるだろう。そのときの担当魔法使いが現役なら、このロストがあり得ない復活をしたことに気づく」
現時点で、瘴気から復活させる方法は一つ。聖属性の魔法。
ロストが復活したとき、今更レナールが聖属性の持ち主だと思う人間はいないだろう。となると、消去法でアリーセが聖女だということになる。
それでも。
「――浄化魔法を使います」
アリーセは迷わずに答えた。レナールがすぐに問い返す。
「君が聖女であることが広まることによって、危険が及ぶかもしれなくても?」
「はい。――雨を待っている人たちのためにも、お役に立ちたいです」