魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
「効果は目に見えているが、一応計測もしておくか」

 レナールがアリーセから離れて、瘴気の計測をする。

「二十五。二十二。二十五……どこも二十台だ」
「さすがにゼロにはならなかったんですね」
「何を言っている。もともと使い物にならなかった魔法回路を復活させただけでも十分だ。これ以上は瘴気が増えるのを防ぐことなら、俺や他の魔法使いにも出来るんだから」

 初めて見る光景に、いつも落ち着いているレナールが珍しく興奮を隠し切れていない。青い目がキラキラと輝いている。

「君のおかげだ。すごいよ。アリーセ」
「ありがとうございます」

(レナール様の役に立てた……)

 うれしさがじわじわと湧いてくる。
 ピリエに来てからずっとレナールにはお世話になりっぱなしだ。
 人買いから助けてくれたのも彼だし、ラウフェンに帰る決断をしたアリーセを止めてくれたのも彼だ。しかも、居候もさせてもらっているし、魔法まで教わっている。
 返しきれない恩を一部でも返せたのならば、とてもうれしい。

「ここからは俺の出番だ。魔法回路さえ使える状態であれば、あとはどうにでもなる」

 魔法回路を見ながらレナールは力強く宣言する。それから、アリーセの方を向いて心配そうに尋ねてきた。

「その前に、アリーセ。調子が悪いとか、そういったことはないか? 慎重にやったつもりだが、どうしても相性も関わってくるから」
「全然平気です。魔力の流れもとてもわかりやすかったですし。それは、とても相性がいいってことなんでしょうか?」

 アリーセが何気なく尋ねると、レナールは何故か虚を突かれたような顔をした。

「あ、ああ。そうだな。そうなのかもしれない」

 ごほん、とレナールが咳払いをする。

「不快でなかったのなら何よりだ。あとは、メンテナンスだな」
「メンテナンスの様子、見ていてもいいですか?」
「もちろんだ」

 ずいぶん長い間使われていなかったロストは、当然ながら魔力が切れていたので、まずは魔力を供給するところから始める。このロストには魔力吸入のための場所が設けてあり、触れるだけで魔力を供給できるようになっていた。
 レナールはメンテナンスで魔力を使うだろうから、アリーセが供給すると申し出ると、アリーセは先ほど浄化魔法を使ったばかりだから自分がやる、とレナールにはねつけられてしまった。
 といっても、このロストはかなり大型のロストだ。確認のために必要な最低限の魔力のみ供給することにする。
 魔力を供給すると、回路が白く光り始める。

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