魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
 二日後。いよいよロストを起動することになった。
 今日もデュラックの町は雲一つない快晴だ。
 アリーセはレナールと共にフェヴァン子爵家の馬車でロストのある小屋に降り立つ。
 小屋の前では年齢もバラバラな男女が五人ほど集まっていた。マルクが声をかけた魔力を持つ領民だろう。皆、期待と不安が入り交じったような表情をしている。
 雨は降ってほしい。けれど本当にロストで雨を降らせることができるのか。そんなところだろう。
 マルクが声をかけると注目がレナールとアリーセに集まった。
 若い女性の領民が、レナールの姿を見て目を見開いている。まあ、その気持ちはアリーセもわかる。レナールはそうそう見ない整った顔立ちをしているのだから。
 レナールと言えば、そんな視線には慣れているのだろう。いつも通り平静だ。

「今日は魔力供給に協力いただけるとのことで、ありがとうございます」
「その、私、魔法が使えないんですが、それでも魔力供給ってできるんですか?」

 真っ先に手を上げたのは、先ほどレナールに釘付けだった若い茶髪の女性だ。はつらつとした印象でシンプルな花柄のワンピースを着ている。

「できます。専用の場所がありますので、そこに触ってもらうだけです」

 表情一つ動かさずに淡々とレナールが答える。
 他にも注意事項をいくつか述べる。触る時間は十秒。その前に気分が悪くなったらすぐに離すこと。魔力が少なくなるとふらつきとかの症状が現れるのだ。少し休めば回復する。
 若い女性はめげずにいくつか質問をしたが、すべてレナールにすげなくあしらわれていた。
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