魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
 レナールとアリーセを先頭に小屋の中に入る。
 そんなに広い空間ではないので、とても狭苦しく感じる。

「これがロストです。といってもこのままだとわかりづらいので魔法回路をお見せします」

 見た目はただの四角形の石なので、皆ぴんときていないようだ。レナールとマルクが協力して板を外し魔法回路が現れると、領民からも感嘆の声が漏れる。
 レナールが初日に流した魔力がまだ残っているので、魔法回路は白く輝いている。何度見ても幻想的で美しい光景だ。
 レナールは魔法回路の説明を簡単に行う。それから、腰くらいの高さにある部分を指した。

「右下のここですね。ここが供給口になります。ここに触れてください。それ以外のところには触れないように気をつけてもらえると助かります。触れたら、ゆっくり十を数えて離してください。おそらく触れているときに、何かを持って行かれるような感覚を覚えると思います。それが魔力がロストに移動している証拠です。これで魔力供給は完了です」

 まず、マルクが先陣を切って魔力供給を行う。マルクは昨日既に経験済みなので、あっさりと終わる。
 皆、順番に魔力を供給する。
 幸いなことに、領民たちで十分な魔力量を供給することができた。

「ロストは、古代魔法を使った魔法道具です。規定容量の魔力さえあれば、誰にでも動かせます。フェヴァン卿」

 昨日、マルクは熱心にレナールからロストの使い方を聞いていた。レナールたちが王都に戻ってもロストを起動するためだ。
 マルクはこくりとうなずくと、起動するための場所に触れる。このロストは、誤動作を防ぐために決められた場所に決められた順番で触れると動作するようになっているらしい。百五十年前の記録に残っていた動作と、レナールが読み解いた結果が一致していることも確認している。

(大丈夫、よね)

 アリーセは祈るような気持ちでその様子を見つめる。

「終わりました」

 マルクがそう告げるが、特に何も変わった様子はない。
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