魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
12 ラウフェンの思惑
ちょうど終業時刻になったので、レナールとアリーセはユーグの執務室からまっすぐ公爵邸へ帰ることになった。
聖女の件は、今週中には公表するという。そのときに一緒にレナールとアリーセの婚約についても発表するそうだ。
レナールを狙っていた令嬢たちが涙に暮れるんじゃない、などとユーグが茶化して、レナールに睨まれていたけれど、当事者であるアリーセもそう思う。
「その、レナール様はよかったんですか?」
馬車の中。アリーセは隣に座るレナールに尋ねた。
「よかった、とは?」
「婚約のことです」
「俺はかまわない。むしろ、余計な縁談に煩わされずに済んでありがたいくらいだ」
(そっか。レナール様にもメリットはあるんだ)
彼にも利点があるとわかって、アリーセはほっとする。ただ、これだけは言っておかないと。アリーセとしては、レナールに迷惑をかけるのは本意ではない。
「でも、その、もし婚約を解消したくなったら教えてくださいね。いつでも解消しますので」
アリーセが大真面目な顔で宣言すると、レナールは少し疲れた表情でため息をついた。
「わかった。そのときは君に教えよう。今のところその予定はないが」
「約束ですよ。――でも、婚約すると何かが変わったりするんでしょうか?」
これは、かりそめの婚約だ。でも、婚約は婚約。その当たりの案配がわからない。
「知りたいか?」
「――え?」
「婚約者になったら何をするか」
聖女の件は、今週中には公表するという。そのときに一緒にレナールとアリーセの婚約についても発表するそうだ。
レナールを狙っていた令嬢たちが涙に暮れるんじゃない、などとユーグが茶化して、レナールに睨まれていたけれど、当事者であるアリーセもそう思う。
「その、レナール様はよかったんですか?」
馬車の中。アリーセは隣に座るレナールに尋ねた。
「よかった、とは?」
「婚約のことです」
「俺はかまわない。むしろ、余計な縁談に煩わされずに済んでありがたいくらいだ」
(そっか。レナール様にもメリットはあるんだ)
彼にも利点があるとわかって、アリーセはほっとする。ただ、これだけは言っておかないと。アリーセとしては、レナールに迷惑をかけるのは本意ではない。
「でも、その、もし婚約を解消したくなったら教えてくださいね。いつでも解消しますので」
アリーセが大真面目な顔で宣言すると、レナールは少し疲れた表情でため息をついた。
「わかった。そのときは君に教えよう。今のところその予定はないが」
「約束ですよ。――でも、婚約すると何かが変わったりするんでしょうか?」
これは、かりそめの婚約だ。でも、婚約は婚約。その当たりの案配がわからない。
「知りたいか?」
「――え?」
「婚約者になったら何をするか」