魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
フィンに案内された客室は、王宮の内装と同じくとても絢爛なものだった。水色に金の差し色が入った幾何学模様の壁紙。天蓋付きのベッドに休憩用の長椅子。小さな書き物用の白い机もある。普段のアリーセだったら、素直にはしゃげたかもしれない。だが、それどころではなかった。
思いがけないジギワルドとの再会。
(あとで話を聞かせてってどういうことなんだろう)
アリーセに王族と面識があるとは思わなかったのだろう。フィンは何かを言いたげにアリーセを見たけれど、ジギワルドの姿が見えなくなったあとは、何事もなかったかのように案内を再開した。
ようやくそこで、レナールも力を緩めてくれる。意外なことに、レナールもアリーセに何も聞いてこなかった。フィンの耳を意識したのかもしれない。その横顔がどこかピリピリしているようにも見えた。
結局、フィンどころかレナールとも一言も言葉を交わさないまま、部屋に到着する。レナールとアリーセは隣り合った部屋をあてがわれていた。
フィンは夕食の時間にまた呼び来ると言って去って行った。
とはいえ、夕食の時間までは少しある。
(レナール様には話すべきよね)
王族であるジギワルドがアリーセの監視者だったこと。それは、アリーセの魔力がラウフェンの中枢で使われていた証左になるように思えた。
そう決めたら早く――と思って立ち上がったとき、部屋の扉がノックされた。
「はい!」
アリーセは慌てて扉を開ける。立っていたのはレナールだった。
今から行こうと思ってたんです、という言葉は呑み込む。レナールの表情がどことなく沈んでいたからだ。
「――少し話があるんだが、かまわないか?」
「もちろんです。私も話があったので」
アリーセはなるべく明るく努めると、レナールを中に招き入れた。
ちょうど水色の長椅子があったので、そこに並んで座る。
(どうしたんだろう……)
やはりレナールの様子がおかしい気がする。けれど、それを尋ねるのもなんとなくはばかられた。
レナールは大きく息をつくと、意を決したようにアリーセの方を見た。
思いがけないジギワルドとの再会。
(あとで話を聞かせてってどういうことなんだろう)
アリーセに王族と面識があるとは思わなかったのだろう。フィンは何かを言いたげにアリーセを見たけれど、ジギワルドの姿が見えなくなったあとは、何事もなかったかのように案内を再開した。
ようやくそこで、レナールも力を緩めてくれる。意外なことに、レナールもアリーセに何も聞いてこなかった。フィンの耳を意識したのかもしれない。その横顔がどこかピリピリしているようにも見えた。
結局、フィンどころかレナールとも一言も言葉を交わさないまま、部屋に到着する。レナールとアリーセは隣り合った部屋をあてがわれていた。
フィンは夕食の時間にまた呼び来ると言って去って行った。
とはいえ、夕食の時間までは少しある。
(レナール様には話すべきよね)
王族であるジギワルドがアリーセの監視者だったこと。それは、アリーセの魔力がラウフェンの中枢で使われていた証左になるように思えた。
そう決めたら早く――と思って立ち上がったとき、部屋の扉がノックされた。
「はい!」
アリーセは慌てて扉を開ける。立っていたのはレナールだった。
今から行こうと思ってたんです、という言葉は呑み込む。レナールの表情がどことなく沈んでいたからだ。
「――少し話があるんだが、かまわないか?」
「もちろんです。私も話があったので」
アリーセはなるべく明るく努めると、レナールを中に招き入れた。
ちょうど水色の長椅子があったので、そこに並んで座る。
(どうしたんだろう……)
やはりレナールの様子がおかしい気がする。けれど、それを尋ねるのもなんとなくはばかられた。
レナールは大きく息をつくと、意を決したようにアリーセの方を見た。