魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています

15 ライバル

 翌日。レナールとアリーセはロストがある部屋にいた。フィンは宣言通り、隣の部屋に仕事を持ち込んでいる。彼の本業はブラッツの補佐官で、要するにレナールと同じだった。
 まずは、魔法回路の浄化だ。
 ロストの浄化はデュラックのロスト以来だ。緊張する。
 レナールの助け無しに一回で全体的に浄化をすることができた。

「……すごいな。アリーセ」

 レナールに褒められたことが嬉しくて、アリーセの顔に笑みが浮かぶ。
 ただ、元々の瘴気の量が多かったため、十分な浄化ではなかった。瘴気量は八十といったところ。アリーセとしては二三回魔法を重ねることを覚悟していたから、思わぬ効果に驚いた。ただ、それ以上の浄化はレナールに止められる。

「まだこのロストの効果がわからない。鑑定には十分だ。このロストの効果が有用だったら、また考えよう」

 魔力が切れている魔法回路は、全体的に色が薄い。見やすくするためにレナールがわずかに魔力を流すとほんの少し白く輝く。

「魔法回路の鑑定、私にも教えてもらっていいですか?」

 アリーセが思い切って申し出ると、レナールは少し目を丸くした。それから破顔する。

「もちろんだ。といっても、見て覚えるしかないんだが」
「はい!」

 レナールは真剣なまなざしで魔法回路を見つめる。

「これは骨が折れそうだな。あまり見たことがない模様がたくさんある。今日は何も持ってきていないから、今日は共通部分を見て、残りは明日以降、資料を持ち込もう」

 一応、魔法回路の資料はピリエから持ってきてある。ラウフェンでは魔法関連の資料は見込めないことがわかっていたからだ。
 レナールは遠目から回路を眺める。
 まずは回路の下の方から確認する。ここは大体内容が共通していて、魔力を受け入れるところなのだという。魔法回路で共通部分と呼ばれる定型的な形だ。

「アリーセ。隣に」

 しゃがみ込んで魔法回路を観察しているレナールに呼ばれて、アリーセは隣に並んだ。

「この形は、だいたいのロストに出てくる。定型文のようなものだ。これが魔法道具であることを宣言する者だと考えられている」

 レナールは角が丸い四角形を指さした。アリーセはメモする。レナールは他にも多くのロストに見られる基本的な形を次々とアリーセに指南してくれた。アリーセは取りこぼさないように必死になった。
 同じものを見ているので、どうしても顔を寄せ合うような形になる。

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