魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
そこからは長い旅路だった。もう何日経ったか数えるのを放棄した。一応粗末ながら食事は出たし、何日かに一度は身体を拭くことも許してもらえた。が、腕輪は不愉快極まりないし、荷台は快適さからはほど遠く、身体中が痛い。
ようやく馬車が目的地についたときにはほっとした。
郊外にある大きな屋敷。
商人に引っ張られるように屋敷の中に連れて行かれて、やたら金ぴかのアクセサリーを身につけた中年男――ギャロワと引き合わされる。ギャロワの方が立場は上のようだ。
二人の会話はおそらくピリエ語で行われていたので、何を話していたのかはわからなかった。が、ギャロワがやたら機嫌が良さそうにアリーセを見ていたのは確かだ。魔法が使える奴隷は高く売れるのだろう。
そしてアリーセはギャロワにこの部屋まで連れてこられる。
買い手が見つかるまで、アリーセはここで待機らしい。大人しくしていれば、屋敷の外には出られないが、最低限の生活は保障されるという。
必要な説明だけすると、ギャロワはさっさと去って行ってしまう。
部屋にあるのは簡易的なベッドと机。取り残されたアリーセはベッドに腰掛けると大きなため息をついた。
まさか、外国に連れてこられてしまうとは。
(帰らなくちゃいけないのに)
もう何日祈りを捧げていないのか考えたくもない。一応、朝、小声で祈りの言葉を口ずさんではいたけれど、魔封じの腕輪をされている時点で、アリーセの祈りは届いていないだろう。
――これからどうなってしまうんだろう。