魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
 アリーセは魔法回路の形に注視する。レナールの言うとおりだった。
 今解析中のロストが浄化魔法が関わっているので、浄化魔法関連の形はよく見ている。だが、それらしき形が全くない。

「どういうことですか?」

 このロストの効果が豊穣でなかったら、一体何の効果だというのだろう。

「これはおそらく……増幅だ」
「――え?」
「魔法の効果を高める効果だ。あとは安定させる効果も入っているようだが、まあ増幅と言い切っていいだろう。以前、似たようなロストを見たことがある」
「……」

 沈黙が降りる。
 どういうことなのだろう。
 アリーセは、この祈りの間が豊穣のロストだと思っていた。けれど、このロストには、増幅の効果しかないというのがレナールの見立て。
 だが、毎日魔力がなくなっていたと言うことは、このロストが使われていたことは確かなのだ。増幅魔法は他の魔法ありきのもの。

「もしかして、他に魔法回路があるのかもしれません」
「その可能性は確かにあるな。何せロストだから」

 豊穣の効果の魔法回路が別の場所にあって、それとつながっているのかもしれない。これだけ大型のロストであれば、十分可能性はあるはずだ。
 レナールと二人で他に魔法回路が隠れていそうな場所がないか一通り探してみたが、残念ながら存在しなかった。あとは外側の壁の部分だが、そこをみるには壁を崩す必要がある。さすがにそこまではできなかった。

(これが豊穣のロストだと思うのに……)

「私、ピリエに戻る前に一度ジギワルド殿下と話をします。そして、私の魔力が何に使われていたのかを教えてもらおうと思います」

 アリーセはレナールの顔をまっすぐ見つめて宣言した。
 きっとジギワルドはアリーセの魔力が何に使われていたかを知っている。

「ラウフェンでのことに決着を付けて、気持ちよくピリエで過ごせるように」
「そうだな。俺たちだけで考えていても、答えはでない。それがいいと思う」

 レナールも賛成してくれた。

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