女王陛下は溺愛禁止!
 数々の青年たちは、ほとんどの場合、きらびやかな黄金の額縁に彩られていた。見事な彫り物が施されているものや、宝石が象嵌されているものもある。
 そこに描かれた青年たちは例外なく整った顔立ちをしており、これまたきらびやかな衣装を身にまとっていた。

 額縁以上に豪華な作りの部屋の中、アンジェリア・シュラード・シュリアンは大きなため息をついた。

「ソルディノアノス王国の女王ともあろう方がみっともない」
 すかさずたしなめるのはアンジェリアの側近、ラドウィルト・リッジ・カリオスだ。

「今ここにいるのは我らふたりだけだ。見逃せ」
 その言葉に、今度はラドウィルトが端正な顔に憂いを浮かべてため息をつく。
「人に注意しておいて」
「仕方ありますまい。(あるじ)が主ですから」
 ラドウィルトの言葉にアンジェリアは肩をすくめる。

「それで、夫にふさわしい、いい人は見つかりましたか?」
「こんな絵姿で見つかるわけがなかろう。はやりの画風にしたのだろうが、似たような顔ばかり、ごてごてした衣装で飾り立てていて、なのに、みな同じに見える。孔雀のほうがまだ落ち着きがあるし区別もつくだろうよ」

 気になっているのは顔貌よりその服装だ。華美でごてごてしていてセンスが悪い。とにかく飾り立てたその姿はいっそ醜悪と言うよりほかなかった。
「お気持ちはお察しいたしますが、ある程度は目星をつけていただかないと。舞踏会は明後日の夜でございます」
 舞踏会という名の集団お見合いが予定されていて、それもまたアンジェリアの憂鬱に拍車をかけていた。
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