女王陛下は溺愛禁止!
「だいたいこの男どもは我が国に王配として君臨したいだけの者どもだ。中には結婚後に私を退位させて王位に就こうと企むものもおるやもおしれぬ。そのような数多(あまた)のクズ石の中からただひとつの(ぎょく)を掴み取るなど、不可能であろうよ」
「なれども陛下にはそれをしていただかねばなりません」

「私よりそなたはどうなのだ。浮いた話のひとつ聞いたことがない。もう二十九であろう?」
「陛下より先に結婚するなどできようはずもございません。私をご心配くださるのでしたら、どうぞご結婚を」

「苦労性よの。いっそ我らが結婚するか? いっきにまとまるぞ」
「そんな面倒はごめんこうむります」
 即答に、アンジェリアは鼻で笑う。

「またそのようなお行儀の悪い笑い方を。トップレディーたるもの、もっとお上品になさってください」
「やってられるか。お上品にした瞬間、なめられる」
 冷めた紅茶を飲み、アンジェリアは顔をしかめる。

 かつてはお上品におしとやかにを心がけていた。
 信頼していた叔父の謀反、文官とのかけひき、軍部とのやりあいの結果、行動をとりつくろうのをやめた。結果、文官はアンジェリアを舐めるのをやめ、軍部はアンジェリアを認め、従うようになった。

 ノックの音がして、ラドウィルトが対応に出る。
 彼はメイドから大きな包みを受けとり、並べられた絵画の前に立てかけた。
「絵姿がまた届いたようです」
「またか」
 うんざりとアンジェリアは呟く。
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