女王陛下は溺愛禁止!
「なんだ!?」
「陛下、こちらへ!」
 ラドウィルトはアンジェリアの手を引いて彼女の前に出て自分の身でかばう。

 やがて光が収まると、そこには銀と見紛うような長いホワイトブロンドをなびかせた美しい青年が立っていた。キトンの上に繊細なひだのついたヒマティオン纏った古風な出で立ちで、黄金の留め金(フィビュール)で肩のあたりで留めている。
細おもては中性的で繊細。その目の色は七色に輝いている。

「やっと……やっと封印が解けた!」
 彼は喜々として叫び、ほうけたように口をぽかんと開けているアンジェリアを見る。

 光を浴びた水晶のようだ、とアンジェリアは彼を見つめた。透き通っていて、光を様々に反射し、人を魅了する。だけどそのかけらの先端は鋭利で、油断をすると人を傷付け血を流す。

「ありがとう、俺の救世主、愛する妻よ!」
「はあ?」
 アンジェリアはぽかんとしているが、ラドウィルトは険しい顔で剣を抜いた。

「こんなおかしなやつが侵入しているとは……どうやって入った!」
「わわ、神に剣を向けるとかひどい!」
 青年は両手を挙げて無抵抗の意志を表示する。

「神だと?」
「そうだよ、神、ここに封印されてた神!」
 青年は石碑を指さして必死に主張する。

「悲恋の末に封印されたかわいそうな俺なんだから、とりあえずその剣を下げて!」
「ならば神であると証明してみろ」
 ラドウィルトの言葉に青年は顔をしかめる。
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