こじらせ美女は王子様の夢を見る
再会
玲央side
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"ピンポーン"
そうだ。俺の静かな日常が壊れたのは、
このチャイムの音がきっかけだ。
"ガチャッ"
ドアの前には、見知らぬ女が立っていた。
「…どちら様……
「れーーおーー!!」
「……は、ちょ、」
その女は、勢いよく俺に抱きつく。
は?怖い怖い
なんでこの人俺の名前知ってんだ…
「ちょ、離してください…」
「はあ?何その敬語。なんかの冗談?」
「いや、まじで誰ですか」
いくら記憶を辿ってもいなかった。
大体、いたとしても忘れるはずがない。
こんなにも……
「うわー、まじで忘れちゃったんだ。ミナだよ!桜井ミナ!」
俺好みな、綺麗な女。
「桜井ミナ……え…」
「あ、思い出した!?幼なじみだったじゃん!」
ああ、名前には聞き覚えがある。
ガキの頃、家が隣でいわゆる幼なじみ。
でも、小2の時あいつの引越しで疎遠になって。
長い間会ってないけど、俺にはわかる。
この美人が、あいつなわけない。
だってあいつは…
「桜井ミナって、あのデブミナ?」
めちゃくちゃ太ってたから。
「ふはっ、そうそう!そう言えば、そう呼ばれてた時もあったな。今思えば、どストレートすぎてただのイジメだよね。」
「…は?まじで桜井ミナ?」
「だからまじって言ってんじゃん!何回言えばいいの!?」
「いやだって、」
「信じてよ!引っ越してからめっちゃ痩せて、中学の時から超モテたし。」
「……まじで?」
上目遣いで、俺を見るこいつに、
咄嗟に顔を背ける。
聞いてねーよ。
…可愛すぎんだろ。
「とりあえず中入れて〜」
寒そうに手を擦りながらそう言うこいつを渋々部屋の中に通す。
そんなミナの手には、デカいキャリーバック。
……なんか嫌な予感がする。
「へえ、意外に部屋綺麗にしてんじゃん。」
「で、何の用?」
「え?あんたのお母さんから聞いてないの?」
「は?何を?」
「私しばらくここにお邪魔するって、」
「…は?」
「え、まじで聞いてないんだ。前、地元でたまたまあんたのお母さんに会って、私が東京に住むって話したら、玲央も東京にいるから一緒に住めばいいって!住所もその時聞いた!」
「…いや、住めばいいって…何も聞いてねーし。それ以前に何でそっちで話解決してんの?俺の意思は?」
「え?住まわせてくれるでしょ?」
「無理」
「なんで!?」
「いや、いきなり来られて一緒に住むとか普通に考えて無理だろ!」
「あ、大丈夫、私ずっとリビングにいるから。あんたの部屋には、絶対入らないし、邪魔しない!」
「…いや、そうゆうことじゃなくて、」
「ねー玲央〜!お願い、ね?私、東京であんたしか知り合いいないの!」
俺の腕にぎゅっと抱きついて、甘えてくるミナ
くっそ、可愛い…。
微かに胸あたってるし。
こうゆう時だけ女使うなよ…
こいつが、あの頃みたいにブスだったら、
きっと俺はまだ正気で秒で追い返してた。
でも……
「……家見つかったらすぐ出てけよ」
ーーああ。結局、俺は男だ。
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