こじらせ美女は王子様の夢を見る

玲央side







"なあ、聞いたか?大学の前のカフェにめっちゃ美人いるんだってよ"


"あー行った行った!超可愛かったぜ"


"まじかよ!超見てー!行ってみようぜ"





「チッ」


「まあまあ、しょうがないじゃん?」




講義室、周りの奴らのそんな話に舌打ちした俺を颯太がなだめる。




ミナがバイトを始めてから噂はすぐに広まった。




あいつは見せ物じゃねーぞ。





「てか颯太。お前がミナのこと姉とか言ったせいで、あのカフェめっちゃ行きずれーんだからな!?店員さんからあ、弟さんてめっちゃ温かい目で見られるんだからな!?どうしてくれんだよ!」



「えー、あの状況だったらあれが最善でしょ。そもそも玲央があそこであんなこと言うから。」



「は?そんなやばいこと言ったか俺」





あの後も家に帰ってミナに散々ぐちぐち言われた。




「玲央あんたね、あそこであんな事言うなんてほんと信じらんない!今回は颯太くんがいたからよかったにしろ、あとちょっとで私あんたのファン達から血祭りされてたから!!ちょっとは反省して!!」





なんだよミナも颯太も。




そんな怒ることかよ





「そうだね、そうゆうとこ玲央ってほんと鈍いよね」



「は?どこが」



「まずカフェ入った瞬間、女の子たちみんな俺ら見てたの気づいてた?」



「……知らねーよそんなん」



「その中で玲央がミナちゃんと一緒に住んでるなんてバレたらさ、付き合ってなかったとしても誤解するでしょ?周りは。そしたら玲央のファン達はいい気するかな?ミナちゃんを攻撃しないとも限らない。」



「…な、」





なんだよそれ。





そんな理由で…





「そんな理由でって思った?」



「……ッ」



「はは、玲央わかりやす。玲央はそんな理由でもさ、ミナちゃんには大きいことかもしれないじゃん。東京来たばかりで無駄に敵作りたくないだろうしさ。」



「あーもうわかったよ、」






…なんだよファンて。




俺たちのこと何にも知らない女達のせいで




気を遣わなきゃいけないって




なんかそれおかしくね?





「大丈夫、玲央がカフェに行けなくても俺がちゃんと行って見てるから、な?」




心配すんな、そう言って俺の肩を叩く颯太。





「何が大丈夫なんだよ」





知らねー女たちよりお前の方が心配なんだよ、




俺の場合は。






「俺、頑張ってみるわ」






いつもの爽やかな笑顔でそう言う颯太。





「じゃ、玲央。また明日な〜」



「お、おい、颯太、どこ行くんだよ!」






颯太は手をヒラヒラ振りながらどこかへ消えていった。




.

< 11 / 16 >

この作品をシェア

pagetop