こじらせ美女は王子様の夢を見る
噂
玲央side
"なあ、聞いたか?大学の前のカフェにめっちゃ美人いるんだってよ"
"あー行った行った!超可愛かったぜ"
"まじかよ!超見てー!行ってみようぜ"
「チッ」
「まあまあ、しょうがないじゃん?」
講義室、周りの奴らのそんな話に舌打ちした俺を颯太がなだめる。
ミナがバイトを始めてから噂はすぐに広まった。
あいつは見せ物じゃねーぞ。
「てか颯太。お前がミナのこと姉とか言ったせいで、あのカフェめっちゃ行きずれーんだからな!?店員さんからあ、弟さんてめっちゃ温かい目で見られるんだからな!?どうしてくれんだよ!」
「えー、あの状況だったらあれが最善でしょ。そもそも玲央があそこであんなこと言うから。」
「は?そんなやばいこと言ったか俺」
あの後も家に帰ってミナに散々ぐちぐち言われた。
「玲央あんたね、あそこであんな事言うなんてほんと信じらんない!今回は颯太くんがいたからよかったにしろ、あとちょっとで私あんたのファン達から血祭りされてたから!!ちょっとは反省して!!」
なんだよミナも颯太も。
そんな怒ることかよ
「そうだね、そうゆうとこ玲央ってほんと鈍いよね」
「は?どこが」
「まずカフェ入った瞬間、女の子たちみんな俺ら見てたの気づいてた?」
「……知らねーよそんなん」
「その中で玲央がミナちゃんと一緒に住んでるなんてバレたらさ、付き合ってなかったとしても誤解するでしょ?周りは。そしたら玲央のファン達はいい気するかな?ミナちゃんを攻撃しないとも限らない。」
「…な、」
なんだよそれ。
そんな理由で…
「そんな理由でって思った?」
「……ッ」
「はは、玲央わかりやす。玲央はそんな理由でもさ、ミナちゃんには大きいことかもしれないじゃん。東京来たばかりで無駄に敵作りたくないだろうしさ。」
「あーもうわかったよ、」
…なんだよファンて。
俺たちのこと何にも知らない女達のせいで
気を遣わなきゃいけないって
なんかそれおかしくね?
「大丈夫、玲央がカフェに行けなくても俺がちゃんと行って見てるから、な?」
心配すんな、そう言って俺の肩を叩く颯太。
「何が大丈夫なんだよ」
知らねー女たちよりお前の方が心配なんだよ、
俺の場合は。
「俺、頑張ってみるわ」
いつもの爽やかな笑顔でそう言う颯太。
「じゃ、玲央。また明日な〜」
「お、おい、颯太、どこ行くんだよ!」
颯太は手をヒラヒラ振りながらどこかへ消えていった。
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