こじらせ美女は王子様の夢を見る
え?
今なんて…
「…それってどうゆう…」
"お待たせしました〜"
注文してた料理が来て、私の声は店員さんの声でかき消された。
颯太くんはニコ、と笑うと
「さ、食べよっか?」と何事もなかったかのように食べ始める。
うそでしょ…
さっきの言葉が気になりすぎて食べるのに集中できず、私だけが動揺していた。
すごい、ドキドキする。
そこからの話はあまり覚えてない。
せっかく2人きりでもっと話すことあったのに…
店を出ると少し肌寒かった。
「寒いね」
空を見ながらそう言う颯太くんに、私はただ「うん」とだけ返す。
だめだ、さっきから意識しすぎてなにも話せない。
「ねえ、手繋いでいい?」
颯太くんは自分の手を差し出しながら首を傾げてそう言った。
「え!?」
あまりの出来事に大きな声を出してしまう。
私の反応に驚いたのか颯太くんは「嫌なら大丈夫」と引っ込みそうになった手を私は慌てて掴んだ。
「あ、いや、じゃない。」
「え?」颯太くんは驚いたのか目をまんまるにする。
「おねがいします…」
ちょ、おねがいしますって何!?
もっと可愛いこと言えなかったのか…
咄嗟に出た言葉に自己嫌悪が止まらない。
ああ、恥ずかしくて颯太くんの顔見れない…
「ふっ、ははは、おねがいしますって」
すると何秒後かに颯太くんの笑い声が聞こえた。
うわー、やっぱ私変なこと言って…
「やっぱミナちゃん可愛いすぎ」
そう言った颯太くんに私は思わず顔を上げる。
目を細めて優しく笑う颯太くんに私は目が離せなかった。
「今のは効いたな〜」そう呟く颯太くん。
待って、、
「ちょ、今のどこが可愛いの!?」
私がそう聞くと
「え?可愛いよ、全部」
なんて答えてくるから、ずるい。
颯太くんは私が掴んだら手を1回離して、
指を絡めて繋ぎ直した。
……恋人繋ぎだ。
直接伝わる颯太くんの手の温度に、私はまた心臓が早くなる。
「よし、お願いされたことだし行こっか?」
颯太くんは意地悪そうな顔でニコニコしながらそう言った。
「…もう、やめてよそれ」
恥ずかしいけど、可愛いって思われたのなら
…よかったのかもしれない。
私たちは手を繋いで歩き出す。
なんかさ、こんなのまるで…
「カップルみたいだね?俺たち」
「え?!」
びっ…くりした。
私も、一緒のこと思ってたから…
「うん、そうだね」
そっか、でも颯太くんも同じこと思ってくれてるんだ。
嬉しいな。
そこから、緊張で何話したかは覚えてないけど、
一瞬で家に着いてしまった。
隣の部屋だけど、玄関先まで一緒に行くからまるで一緒に住んでるみたい。
私たちは部屋の前で立ち止まる。
…まだ手は繋いだまま。
「じゃ、今日はありがとね」
「うん、私こそありがとう!楽しかった!」
ほんとに、楽しかった。
もう終わりか、ちょっと名残惜しいな。
私は少し視線を下へ移す。
すると、ふわっと柑橘系の香りが香った。
颯太くんの匂いだ。
…私今、たぶん抱きしめられてる。
「そんな顔しないでよ、帰したくなくなる」
「え?」
その後すぐに体が離れた。
「冗談。またね、ミナちゃん」
颯太くんは私の頭をさっとなでると
私にとんでもない余韻を残して自分の部屋に入って行った。
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