こじらせ美女は王子様の夢を見る
玲央side
「私を、玲央のものにしてくれる?」
「……」
冗談で、あんなこと言った俺が馬鹿だった。
至近距離にある、
ミナの濡れた目、ぷっくりとした唇、
俺の頬を触る手、
全てが俺をおかしくさせる。
「ぷはっ、」
そして突然笑い出したミナ。
「冗談冗談、何でそんな真面目な顔してんの」
「…はぁ、お前まじで…」
俺の方がからかったつもりだったのに、
逆にハメられたらしい。
恐ろしい女。
俺は、ミナから離れる。
「顔赤くしちゃって、可愛いなーもう。てかあんたの冗談もひどすぎ。まだ好きなわけないでしょ、何年前だと思ってんの」
すっげームカつく。
俺をはめたこいつにも。
まだ馬鹿みたいに心臓が早い俺にも。
「玲央は、私にとって昔の思い出だよ」
ミナは優しい昔を思い出してるような顔でそう言った。
「さー荷物片付けよ!玲央が馬鹿なこと言ってるからなんもできなかった〜」
さっきの甘い雰囲気から一変、
キャリーケースを広げる。
こいつ…
「クローゼット、使っていいけど俺が今置いてるやつ減らせねーから。あと無駄なもの増やすな。部屋散らかすな。」
「わーかってるて!着替えるから向こうむいてて〜」
そう言って半強制的に俺を反対に向かせるミナ。
「見ないでね?」と笑いながら言う。
「見ねーし、お前の体なんか」
そう言いながらも、ほんとは超気になる。
ミナは友達だし。
ガキの頃のあだ名はブスミナだったわけで、
別に大丈夫……
「こっち見ていいよー」
……じゃねーだろ。
Tシャツに短いハーフパンツに長い髪を結んでる。
こいつ男経験ないとか嘘だろ。
ドンピシャで男が好きな格好を…
「玲央?」
不自然に視線を逸らしてるとミナが覗き込んでくる。
あー可愛い。
くっそ、うろたえんな。
童貞かよ。
平常心、平常心。
「…早く片付けろ」
俺のその言葉にミナは「はーい」と言って片付けだす。
初日でこれかよ…
俺大丈夫か。