【Guilty secret】
「……恥ずかしい」
『何が?』
「お風呂一緒に入るのが……」
薄暗く照明を落とした浴室は浴槽内に仕込まれた紫色のライトだけが灯っている。妖しげな紫の光の中で赤木の顔が見えた。
『そういう恥じらいも昔はなかったな。恥じらいなんて無縁で、俺の入浴中に真っ裸になって風呂場に入ってきたぞ』
「もう10歳の子どもじゃないです」
いつまでも10年前の話を持ち出す彼を軽く睨み付けた。精一杯睨んでみても、赤木の細長い指先で身体に触れられると、芽依は途端に弱々しくなる。
『そうだよな。もう子どもじゃなかったんだよな。芽依は大人の女だ』
湯船の中で赤木の大きな手が芽依の丸い乳房を掴んで揉みしだく。赤木が手を動かすたびに水面が揺れて水が跳ねた。
くすぐったいのにむずむずして、もっと触ってほしくて、恥ずかしくて、彼女は自分から赤木に身体を擦り付けていた。
髪と身体を赤木の手で丁寧に洗われた。昔と同じ優しい手つきで、硝子の宝物を扱うみたいにそっと優しく。
芽依には親と一緒に風呂に入った記憶がない。物心ついた時には、すでにひとりで入浴していてそれが当たり前だと思っていた。
だから、“昨日はお母さんとお風呂に入った”と小学校の同級生の話を聞いた時に芽依はとても驚いた。
父親や母親に髪を洗ってもらったり、背中を流してもらった記憶もない。
10年前の10歳の時に赤木と一緒に風呂に入って、初めて誰かに髪を洗ってもらう経験をした。
10年前も今も、髪や身体を洗ってくれる赤木の手つきは父親のようで母親のようで、芽依がずっと求めていたものだ。
赤木が芽依のすべての初めての人だった。
大きなベッドに男と女の身体が沈む。
浴室からベッドに移動しても赤木はいつまでも丁寧に芽依に触れていた。痛くない? 大丈夫? と彼女の反応を確認しながら彼は優しく芽依を抱いた。
飽きずに何度も続けた情事に疲れ果てた芽依が瞼を下ろして寝息を立て始める。
まだ男に慣れていない彼女に無理をさせてしまったと自嘲気味に笑って、赤木は芽依の髪を撫でた。
『……愛してる』
情事の最中、一度も口にしなかった想いを呟いた彼は眠る芽依を抱き締めた。
何事も始まりには終わりがあることを、人はいつ、知るのかな……?
『何が?』
「お風呂一緒に入るのが……」
薄暗く照明を落とした浴室は浴槽内に仕込まれた紫色のライトだけが灯っている。妖しげな紫の光の中で赤木の顔が見えた。
『そういう恥じらいも昔はなかったな。恥じらいなんて無縁で、俺の入浴中に真っ裸になって風呂場に入ってきたぞ』
「もう10歳の子どもじゃないです」
いつまでも10年前の話を持ち出す彼を軽く睨み付けた。精一杯睨んでみても、赤木の細長い指先で身体に触れられると、芽依は途端に弱々しくなる。
『そうだよな。もう子どもじゃなかったんだよな。芽依は大人の女だ』
湯船の中で赤木の大きな手が芽依の丸い乳房を掴んで揉みしだく。赤木が手を動かすたびに水面が揺れて水が跳ねた。
くすぐったいのにむずむずして、もっと触ってほしくて、恥ずかしくて、彼女は自分から赤木に身体を擦り付けていた。
髪と身体を赤木の手で丁寧に洗われた。昔と同じ優しい手つきで、硝子の宝物を扱うみたいにそっと優しく。
芽依には親と一緒に風呂に入った記憶がない。物心ついた時には、すでにひとりで入浴していてそれが当たり前だと思っていた。
だから、“昨日はお母さんとお風呂に入った”と小学校の同級生の話を聞いた時に芽依はとても驚いた。
父親や母親に髪を洗ってもらったり、背中を流してもらった記憶もない。
10年前の10歳の時に赤木と一緒に風呂に入って、初めて誰かに髪を洗ってもらう経験をした。
10年前も今も、髪や身体を洗ってくれる赤木の手つきは父親のようで母親のようで、芽依がずっと求めていたものだ。
赤木が芽依のすべての初めての人だった。
大きなベッドに男と女の身体が沈む。
浴室からベッドに移動しても赤木はいつまでも丁寧に芽依に触れていた。痛くない? 大丈夫? と彼女の反応を確認しながら彼は優しく芽依を抱いた。
飽きずに何度も続けた情事に疲れ果てた芽依が瞼を下ろして寝息を立て始める。
まだ男に慣れていない彼女に無理をさせてしまったと自嘲気味に笑って、赤木は芽依の髪を撫でた。
『……愛してる』
情事の最中、一度も口にしなかった想いを呟いた彼は眠る芽依を抱き締めた。
何事も始まりには終わりがあることを、人はいつ、知るのかな……?