【Guilty secret】
アヤコ先生に案内されて沙耶はみどり園の建物に入った。廊下の壁には子ども達が作った絵や工作が飾られ、園内の雰囲気は幼稚園や小学校に似ている。
建物や遊ぶ子ども達の雰囲気も幼稚園や小学校と変わらないと感じたことをアヤコ先生に伝えようとした時、廊下の向こうから歩いてきた女の子が沙耶を見て立ち止まった。
「マミちゃん。この人は大丈夫だよ」
アヤコ先生が優しく“マミちゃん”に話しかけてもマミちゃんはその場を動かない。彼女は沙耶を威嚇するような鋭い眼差しを向けていた。
小学校低学年くらいのマミちゃんから放たれる冷たい視線に沙耶は背筋がぞっと寒くなった。マミちゃんの反応は沙耶に興味を示したミライちゃんとは正反対だ。
「お部屋に行ってなさい」
マミちゃんの頭をアヤコ先生が優しく撫でると、マミちゃんは素直に頷いて階段を駆け上がっていった。
「申し訳ありません。あの子は親に虐待されていた子なんです。だから大人を怖がるところがあって、ここの職員以外の大人を警戒しているんです」
「そういった事情を持つ子達が引き取られている施設ですものね。でもさっきのミライちゃんは天真爛漫な印象を受けましたが……」
「ミライちゃんは1歳の頃からうちで育っているのでここ以外の世界を知りません。きっとミライちゃんの明るさは、それが幸いしているのでしょう。外の世界を知ってしまってからここに来た子達はあんな風にはいられません」
長い廊下をアヤコ先生と並んで歩く。最初に接したミライちゃんがあまりにも沙耶が抱く“普通の子ども”だったせいで忘れかけていたが、ここは小学校でも幼稚園でもない、児童養護施設だ。
「ミライちゃんのように自我が芽生える前からこの園で過ごす子もいますが、大半は小学校に上がる前に児童相談所に保護されてここに来た子達ばかりです。マミちゃんもここに来たのは去年なんですよ。みんな大人に体も心も傷付けられて癒えない傷を負って……最初は私達職員と目を合わせることもしてくれません」
幼稚園や小学校と似て非なる場所、それが児童養護施設だと沙耶は痛感した。言動のひとつひとつに細心の注意を払わなければならない。
建物や遊ぶ子ども達の雰囲気も幼稚園や小学校と変わらないと感じたことをアヤコ先生に伝えようとした時、廊下の向こうから歩いてきた女の子が沙耶を見て立ち止まった。
「マミちゃん。この人は大丈夫だよ」
アヤコ先生が優しく“マミちゃん”に話しかけてもマミちゃんはその場を動かない。彼女は沙耶を威嚇するような鋭い眼差しを向けていた。
小学校低学年くらいのマミちゃんから放たれる冷たい視線に沙耶は背筋がぞっと寒くなった。マミちゃんの反応は沙耶に興味を示したミライちゃんとは正反対だ。
「お部屋に行ってなさい」
マミちゃんの頭をアヤコ先生が優しく撫でると、マミちゃんは素直に頷いて階段を駆け上がっていった。
「申し訳ありません。あの子は親に虐待されていた子なんです。だから大人を怖がるところがあって、ここの職員以外の大人を警戒しているんです」
「そういった事情を持つ子達が引き取られている施設ですものね。でもさっきのミライちゃんは天真爛漫な印象を受けましたが……」
「ミライちゃんは1歳の頃からうちで育っているのでここ以外の世界を知りません。きっとミライちゃんの明るさは、それが幸いしているのでしょう。外の世界を知ってしまってからここに来た子達はあんな風にはいられません」
長い廊下をアヤコ先生と並んで歩く。最初に接したミライちゃんがあまりにも沙耶が抱く“普通の子ども”だったせいで忘れかけていたが、ここは小学校でも幼稚園でもない、児童養護施設だ。
「ミライちゃんのように自我が芽生える前からこの園で過ごす子もいますが、大半は小学校に上がる前に児童相談所に保護されてここに来た子達ばかりです。マミちゃんもここに来たのは去年なんですよ。みんな大人に体も心も傷付けられて癒えない傷を負って……最初は私達職員と目を合わせることもしてくれません」
幼稚園や小学校と似て非なる場所、それが児童養護施設だと沙耶は痛感した。言動のひとつひとつに細心の注意を払わなければならない。