【Guilty secret】
7.ゆびきり
 時刻はもうすぐ午後3時。芽依は自宅のベッドの上で小説を読んでいた。
今日は書店のバイトは休みの日。朝から好きな映画のDVDを観たり読書をしたり、休日を有意義に過ごせている。

 でもどんなに夢中になって映画を観たり読書をしても、彼のことを思い出してしまう。
赤木奏……あの男のことを考えると無意識に流れる懐かしくて物悲しい童謡のメロディ。

彼の右手の甲の火傷の痕を見た瞬間に全身が脈打ち、熱が出たみたいに顔は熱くなって心臓がドキドキした。

 10年前の“お兄ちゃんが”作ってくれたホットココアは美味しかった。10年前のお兄ちゃん……あの人はどこにいるの?

もう一度、あの人に会いたい。
どこに行けば会える?
どこに行けば……。

 芽依はショルダーバッグに携帯電話と財布、自転車の鍵と電子マネーの乗車カードを詰め込んで部屋を出る。

「今からお出掛け?」
「うん。お夕御飯までには帰るね」

母にいってきますと告げて彼女は自宅を飛び出した。

        *

 赤い夕日の中で子供達が元気に遊び回る日曜日の公園。
東京都小平市の小平中央公園の小道を赤木奏は歩く。少しずつ紅葉の色づきを見せるイチョウの葉が赤い光を浴びていた。

地面に落ちている葉を拾い上げる。焦げ茶色の枯れ葉を見て赤木は口元を上げた。

(あいつによく落ち葉を作ってやったな……)


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