【Guilty secret】
8.運命か、宿命か、呪いか。
 咀嚼音に似た音が羞恥と興奮を煽る。

「ぁっ、ンンッ…!」

ぐちゃぐちゃに濡れた穴に挿しこまれた男のモノに激しく貫かれて彼女は絶頂に上り詰めた──。

        *

 園山詩織はめくれた掛け布団から伸ばした細長い脚を空中でバタつかせる。ネイルサロンで手入れされた艶のある真っ赤なネイルが彼女の足の爪を彩っていた。

「奏、今日はどうしたの?」
『何が?』

ベッドに仰向けになる赤木奏は頭の下で腕を組んで天井を睨み付けていた。

「会う予定のない日に奏から会いたいって連絡来たの初めてだよ。嬉しいけど、今日の奏はいつもと違った。今まで押し倒したりしたことなかったもの。抱き方も攻撃的って言うか……素敵だったけどね」
『いつもと同じだろ』
「いつもこれくらい私に積極的な愛情を示してくれるならいいんだけどねぇ」

 詩織から赤木にキスをする。赤木が詩織の後頭部を抱え、いやらしく何度もキスを交わした。そのまま詩織は彼の胸元に舌を這わせる。

「ね、もう一回しよ。今夜の貴重な奏をもっと堪能したい」
『もうそんな元気ない』
「私が元気にさせてあげる。だから奏も私にして?」

 身体の向きを変えた詩織は寝そべる赤木に覆い被さった。数字の6と9を真似るように、詩織の顔は赤木の下半身に埋まり、赤木の顔の上には詩織の下半身が重なる。

 彼女は恥ずかしげもなくその最も卑猥な部分を赤木に晒した。詩織は裸婦のモデルを務める時も、その部分を晒すポーズを自分からしている。

もちろん彼女が裸婦のモデルをするのは赤木にだけだ。だから詩織の生殖器の構造を赤木は熟知していた。

 赤木は詩織のヒップを鷲掴み、目の前の割れ目に唇をつけた。彼がそこを舐めると詩織はくぐもった声で啼《な》き、詩織の口内にある赤木の一部も硬さと膨らみを増した。

詩織から分泌される愛液が赤木の鼻先を濡らす。濡れても濡れても赤木は彼女の割れ目や突起にむしゃぶりついた。

 今夜は女を貪《むさぼ》りたい気分だった。
濡れた詩織のそこに己を挿し入れ、彼女を掻き抱く。詩織は何度も絶頂を迎え、赤木も彼女の中で二度目の欲を解放した。

 二回目の行為を終えた頃には二人とも息が上がっていた。詩織は機嫌良く鼻唄を歌いながら浴室に入っていく。やがてシャワーの音が聞こえた。

 射精の倦怠感を抱えた赤木はベッドに深く沈んで目を閉じる。考えるのは詩織のことではなく、夕方に公園で会った女のこと。

10年前の少女と夕暮れで再会した女の顔が重なる。当然だが10年も経てば少女も大人になるものだ。

『大きくなったな。……芽依』

 二度と会わないと誓ったあの子と再び巡り合ってしまったことを、人はなんと呼ぶのだろう。

運命?  宿命?  それとも呪い?

もしもこれが運命ならば
もしもこれが宿命ならば
もしもこれが呪いならば

きっとまた、二人は出会う。


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