【Guilty secret】
10.遭遇
10月11日(Tue)午後12時20分
明鏡大学の学食に続々と学生が集まっている。午前中に行われた就職セミナーの参加を終えた学生達が、セミナーの最中に書き記したレポートや企業案内のパンフレットを見て感想を言い合っている。
学食の片隅で母親の手作り弁当を広げた芽依の側に友人の理江子が駆け寄って来た。理江子はセミナーで貰った企業案内の資料でパンパンに膨らんだファイルを抱えている。
「ねぇねぇ、芽依。さっき中庭に変な人がいたよ」
「変な人?」
芽依はおかずのミートボールを口に入れて咀嚼した。今日のメインは弁当箱いっぱいに詰まったオムライスだ。
「総合文化学部2年の清宮芽依さんについて何か知りませんかー? って女の人が聞き回ってるの」
「なにそれ不審者?」
傍らで話を聞いていた夕美が眉をひそめた。理江子は見かけた女の姿形を身ぶり手振りで表現する。
「不審者って感じじゃなかった。ジャケット着ててぇー、茶髪の髪を後ろで縛っててぇー、メモ帳持ってウロウロしてたからマスコミっぽい」
「なんでマスコミが芽依のこと聞き回ってるの? 芽依、心当たりない?」
夕美に聞かれても芽依は首を横に振るしかない。マスコミに追いかけられる心当たりはない。しかし拭えない胸騒ぎは何?
(マスコミがどうして私のことを……)
心当たりがあるとすればひとつだけ。養子縁組をして新しい姓と新しい生活を手に入れても消せない芽依の過去。
自分が10年前の殺人事件の被害者遺族である事実は、消そうとしても決して消えない過去だった。
明鏡大学の学食に続々と学生が集まっている。午前中に行われた就職セミナーの参加を終えた学生達が、セミナーの最中に書き記したレポートや企業案内のパンフレットを見て感想を言い合っている。
学食の片隅で母親の手作り弁当を広げた芽依の側に友人の理江子が駆け寄って来た。理江子はセミナーで貰った企業案内の資料でパンパンに膨らんだファイルを抱えている。
「ねぇねぇ、芽依。さっき中庭に変な人がいたよ」
「変な人?」
芽依はおかずのミートボールを口に入れて咀嚼した。今日のメインは弁当箱いっぱいに詰まったオムライスだ。
「総合文化学部2年の清宮芽依さんについて何か知りませんかー? って女の人が聞き回ってるの」
「なにそれ不審者?」
傍らで話を聞いていた夕美が眉をひそめた。理江子は見かけた女の姿形を身ぶり手振りで表現する。
「不審者って感じじゃなかった。ジャケット着ててぇー、茶髪の髪を後ろで縛っててぇー、メモ帳持ってウロウロしてたからマスコミっぽい」
「なんでマスコミが芽依のこと聞き回ってるの? 芽依、心当たりない?」
夕美に聞かれても芽依は首を横に振るしかない。マスコミに追いかけられる心当たりはない。しかし拭えない胸騒ぎは何?
(マスコミがどうして私のことを……)
心当たりがあるとすればひとつだけ。養子縁組をして新しい姓と新しい生活を手に入れても消せない芽依の過去。
自分が10年前の殺人事件の被害者遺族である事実は、消そうとしても決して消えない過去だった。