【Guilty secret】
「じゃあ西崎って記者はこの事件の取材が目的で芽依ちゃんに近付こうとしていたんですね」
『だろうね。彼女がどんな記事を書きたいかは知らないが、被害者遺族とコンタクトを取ろうとしていることは間違いない。娘にとっては過去の辛い記憶を根掘り葉掘り聞かれて迷惑な話だ』
「誰にでも人に話したくない過去はありますよね」
彼女は今まで芽依と過ごした日々を回顧《かいこ》する。芽依の人懐っこい笑顔の裏に隠された悲しい過去。
誰もがそれぞれに悲しい出来事を背負って前に進む。生きるために。
「だけど私にはどうすることもできませんよね。記事を書くのを止めさせることもできないし、芽依ちゃんの過去にも迂闊に踏み込めない。芽依ちゃんのために何もしてあげられない……」
『そんなことはない。美月ちゃんだからその子の痛みに寄り添えるんだよ』
福山の美月へ向ける眼差しは慈愛に満ちている。幼かった彼女も22歳になり、もうすぐ人生の門出を迎える。
『幸次郎とも話していたんだけど、美月ちゃんと木村くんの結婚が決まって嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちだよ。でも本当に良かった。婚約おめでとう』
「ありがとうございます。……あのね、おじさま。私、佐藤さんのこと今でも好きです」
照れ臭そうにはにかむ美月が呟いた懐かしい名前に福山の胸の奥がキリリと痛む。
かつて美月が愛した男、佐藤瞬は福山の部下だった。福山も5年前に佐藤が起こした静岡連続殺人事件の関係者だ。
美月と佐藤の悲恋の物語もその結末も、福山は見届けた。
「前は必死で佐藤さんを忘れようとしていたけど今は忘れる必要もないのかなって思うんです。愛した人を無理やり忘れることはできない。忘れたくもない。隼人も大切だけど佐藤さんもいつまでも私の好きな人なの」
佐藤を好きと語る美月からは大人の強さと成長を感じさせた。彼女は本当に大人になった。
『今、幸せなんだね』
「はい」
美月は誰をも魅了する優しい笑みを浮かべて頷いた。
『だろうね。彼女がどんな記事を書きたいかは知らないが、被害者遺族とコンタクトを取ろうとしていることは間違いない。娘にとっては過去の辛い記憶を根掘り葉掘り聞かれて迷惑な話だ』
「誰にでも人に話したくない過去はありますよね」
彼女は今まで芽依と過ごした日々を回顧《かいこ》する。芽依の人懐っこい笑顔の裏に隠された悲しい過去。
誰もがそれぞれに悲しい出来事を背負って前に進む。生きるために。
「だけど私にはどうすることもできませんよね。記事を書くのを止めさせることもできないし、芽依ちゃんの過去にも迂闊に踏み込めない。芽依ちゃんのために何もしてあげられない……」
『そんなことはない。美月ちゃんだからその子の痛みに寄り添えるんだよ』
福山の美月へ向ける眼差しは慈愛に満ちている。幼かった彼女も22歳になり、もうすぐ人生の門出を迎える。
『幸次郎とも話していたんだけど、美月ちゃんと木村くんの結婚が決まって嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちだよ。でも本当に良かった。婚約おめでとう』
「ありがとうございます。……あのね、おじさま。私、佐藤さんのこと今でも好きです」
照れ臭そうにはにかむ美月が呟いた懐かしい名前に福山の胸の奥がキリリと痛む。
かつて美月が愛した男、佐藤瞬は福山の部下だった。福山も5年前に佐藤が起こした静岡連続殺人事件の関係者だ。
美月と佐藤の悲恋の物語もその結末も、福山は見届けた。
「前は必死で佐藤さんを忘れようとしていたけど今は忘れる必要もないのかなって思うんです。愛した人を無理やり忘れることはできない。忘れたくもない。隼人も大切だけど佐藤さんもいつまでも私の好きな人なの」
佐藤を好きと語る美月からは大人の強さと成長を感じさせた。彼女は本当に大人になった。
『今、幸せなんだね』
「はい」
美月は誰をも魅了する優しい笑みを浮かべて頷いた。