【Guilty secret】
在宅中の住民数名に話が聞けた。まずは町内会で被害者の佐久間聡子と同じ役員に所属していた40代の主婦の証言だ。
話は玄関先で構わないと言った真紀の膨らんだ下腹部を見て、冷えるとお腹の子によくないからと主婦は真紀と矢野を居間に通してくれた。
──佐久間夫妻の人柄は?
──「ご主人のことはよくは知りませんが、聡子さんとは町内会の役員で一緒にお仕事をしました。お上品な奥様でした」
──娘の芽依について覚えていることは?
──「挨拶をきちんとする礼儀正しいお子さんでした。佐久間さんのお宅は社長さんですし、礼儀作法は教え込まれていたのでしょうね。聡子さんも教育熱心な方でしたから塾も沢山通っていたような……。同い年の子達よりも大人びてしっかりした印象でしたよ」
──佐久間夫妻に恨みを持つ人物に心当たりは?
──「ありませんねぇ。……あ、でも聡子さんは少し気性が荒くて高飛車……と言うほどでもないんですけれど、気分の浮き沈みの激しい人でした。私も亡くなった人を悪く言いたくはないんですが、気分屋な面では私も含めて町内会の役員は振り回されていましたね。ご実家がそれなりのお金持ちと聞いていますし、あれがお嬢様気質と言うんですかねぇ。普段はいい人なんですよ? だけどひとつ気に入らないことがあると……ねぇ。そういう扱いに困る人って、いますでしょう?」
婦人宅を辞した真紀は今の家が載っている地図に赤ペンで斜線を引く。聞き込み完了の印だ。
『聡子は気性が荒く気分屋のお嬢様気質か』
「当時もその証言は出ていて、聡子とトラブルがあった関係者を数人洗ったけど全員アリバイありだったの。さっきの奥さんもアリバイあり」
『あの奥さんも本音では聡子のこと、そんなに好きじゃなさそうだったよな。聡子に恨みがあるなら聡子だけを殺せばいいのに夫も一緒に殺されてるし、娘は1週間行方不明。娘に関しては完全に良家の娘のイメージだな』
矢野はスマホのマップアプリで次の聞き込み対象者の家のルートを調べている。次の家は、ここから道を真っ直ぐ行って左折した先にある。
「10年前の住民達の調書を読んでいても、娘の芽依は礼儀正しくて勤勉、聡子は教育熱心な母親、晋一はやり手の実業家、家はローンなしの新築一戸建てで、家を建てる時に聡子の実家からかなりの金銭的援助が出ていたらしい。晋一の会社も業績は良くて会社関係でのトラブルはなく、社員に慕われるいい社長。休日は社員の家族や町内の人を招いて自宅でバーベキューやホームパーティーを楽しんだ……とか。うーん……何かねぇ……。肩が凝りそうな要素の詰め合わせなのよ」
真紀は捜査資料に掲載されている佐久間一家の顔写真や自宅写真のカラーコピーを矢野に見せる。取り壊されて存在しない佐久間邸は外観は白を基調とした大きな一軒家だった。
花壇で彩られた庭もかなりの広さだ。
話は玄関先で構わないと言った真紀の膨らんだ下腹部を見て、冷えるとお腹の子によくないからと主婦は真紀と矢野を居間に通してくれた。
──佐久間夫妻の人柄は?
──「ご主人のことはよくは知りませんが、聡子さんとは町内会の役員で一緒にお仕事をしました。お上品な奥様でした」
──娘の芽依について覚えていることは?
──「挨拶をきちんとする礼儀正しいお子さんでした。佐久間さんのお宅は社長さんですし、礼儀作法は教え込まれていたのでしょうね。聡子さんも教育熱心な方でしたから塾も沢山通っていたような……。同い年の子達よりも大人びてしっかりした印象でしたよ」
──佐久間夫妻に恨みを持つ人物に心当たりは?
──「ありませんねぇ。……あ、でも聡子さんは少し気性が荒くて高飛車……と言うほどでもないんですけれど、気分の浮き沈みの激しい人でした。私も亡くなった人を悪く言いたくはないんですが、気分屋な面では私も含めて町内会の役員は振り回されていましたね。ご実家がそれなりのお金持ちと聞いていますし、あれがお嬢様気質と言うんですかねぇ。普段はいい人なんですよ? だけどひとつ気に入らないことがあると……ねぇ。そういう扱いに困る人って、いますでしょう?」
婦人宅を辞した真紀は今の家が載っている地図に赤ペンで斜線を引く。聞き込み完了の印だ。
『聡子は気性が荒く気分屋のお嬢様気質か』
「当時もその証言は出ていて、聡子とトラブルがあった関係者を数人洗ったけど全員アリバイありだったの。さっきの奥さんもアリバイあり」
『あの奥さんも本音では聡子のこと、そんなに好きじゃなさそうだったよな。聡子に恨みがあるなら聡子だけを殺せばいいのに夫も一緒に殺されてるし、娘は1週間行方不明。娘に関しては完全に良家の娘のイメージだな』
矢野はスマホのマップアプリで次の聞き込み対象者の家のルートを調べている。次の家は、ここから道を真っ直ぐ行って左折した先にある。
「10年前の住民達の調書を読んでいても、娘の芽依は礼儀正しくて勤勉、聡子は教育熱心な母親、晋一はやり手の実業家、家はローンなしの新築一戸建てで、家を建てる時に聡子の実家からかなりの金銭的援助が出ていたらしい。晋一の会社も業績は良くて会社関係でのトラブルはなく、社員に慕われるいい社長。休日は社員の家族や町内の人を招いて自宅でバーベキューやホームパーティーを楽しんだ……とか。うーん……何かねぇ……。肩が凝りそうな要素の詰め合わせなのよ」
真紀は捜査資料に掲載されている佐久間一家の顔写真や自宅写真のカラーコピーを矢野に見せる。取り壊されて存在しない佐久間邸は外観は白を基調とした大きな一軒家だった。
花壇で彩られた庭もかなりの広さだ。