【Guilty secret】
午後4時、明鏡大学構内。
「芽依、今日バイト休みだよね。買い物行かない?」
「今日は親に早く帰って来いって言われてるんだ。ごめんね」
遊びに誘ってくれた友達に嘘が混じる断りの返事をして芽依は講義室を出た。
夜中に見た赤い悪夢の光景が頭に張り付いて離れない今日は、誰かと遊ぶ気分にはなれなかった。
大学の正門まで続く並木道の木々の葉が風に揺れる。秋色に彩られた葉がひらひら舞って地面に着地した。
あれから10年。秋の訪れのたびにあの頃の“お兄ちゃん”である赤木奏を思い出していた。
会えるはずがない。会ってはいけない存在だと認識していても、どこかで彼の存在を拠り所にして生きてきた。
赤木とは昨日の別れからこれっきり、二度と会えないかもしれない。別にそれでもいいじゃないか、今までも10年間で一度も会わなかったのだからまた会えなくなっても平気……そう言い聞かせても抑えられない想いが心に宿る。
正門を出たところで芽依は顔を強張らせた。西崎沙耶が門の前に立っている。
「よかった。時間通りに学校終わったね」
「まさか私の学校のスケジュールまで調べたの?」
「ごめんね。こうでもしないと芽依ちゃんと会えるタイミングがないから」
「話すことは何もない」
芽依の口調は冷たく、頑なに沙耶を拒絶している。だが沙耶も引き下がらない。
「ご両親を殺した犯人を捕まえたくないの?」
「犯人を捕まえても死んだ人は生き返らない。それに私の両親はもう他にいる。今の私の家族は清宮の父と母だけ。昔のことは忘れたいの。だからもう私に関わらないでっ!」
沙耶に言い捨てて芽依は走り出した。後方で沙耶が芽依の名を呼ぶが芽依は振り返らずに渋谷駅を目指して全力で走った。
沙耶は芽依を追わなかった。彼女は走り去る芽依の背中を見て肩を落とす。
「やっぱりジャーナリストなんて嫌な仕事……」
沙耶の溜息に呼応して吹いた秋の風が再び落ち葉の葉の音を鳴らした。
「芽依、今日バイト休みだよね。買い物行かない?」
「今日は親に早く帰って来いって言われてるんだ。ごめんね」
遊びに誘ってくれた友達に嘘が混じる断りの返事をして芽依は講義室を出た。
夜中に見た赤い悪夢の光景が頭に張り付いて離れない今日は、誰かと遊ぶ気分にはなれなかった。
大学の正門まで続く並木道の木々の葉が風に揺れる。秋色に彩られた葉がひらひら舞って地面に着地した。
あれから10年。秋の訪れのたびにあの頃の“お兄ちゃん”である赤木奏を思い出していた。
会えるはずがない。会ってはいけない存在だと認識していても、どこかで彼の存在を拠り所にして生きてきた。
赤木とは昨日の別れからこれっきり、二度と会えないかもしれない。別にそれでもいいじゃないか、今までも10年間で一度も会わなかったのだからまた会えなくなっても平気……そう言い聞かせても抑えられない想いが心に宿る。
正門を出たところで芽依は顔を強張らせた。西崎沙耶が門の前に立っている。
「よかった。時間通りに学校終わったね」
「まさか私の学校のスケジュールまで調べたの?」
「ごめんね。こうでもしないと芽依ちゃんと会えるタイミングがないから」
「話すことは何もない」
芽依の口調は冷たく、頑なに沙耶を拒絶している。だが沙耶も引き下がらない。
「ご両親を殺した犯人を捕まえたくないの?」
「犯人を捕まえても死んだ人は生き返らない。それに私の両親はもう他にいる。今の私の家族は清宮の父と母だけ。昔のことは忘れたいの。だからもう私に関わらないでっ!」
沙耶に言い捨てて芽依は走り出した。後方で沙耶が芽依の名を呼ぶが芽依は振り返らずに渋谷駅を目指して全力で走った。
沙耶は芽依を追わなかった。彼女は走り去る芽依の背中を見て肩を落とす。
「やっぱりジャーナリストなんて嫌な仕事……」
沙耶の溜息に呼応して吹いた秋の風が再び落ち葉の葉の音を鳴らした。