【Guilty secret】
デザイン事務所を出た赤木はスマホの着信履歴と留守番電話を確認した。7分前にヒグマ書店から着信があり、留守番電話に留守電が入っていた。
歩きながら留守電を聞く。内容はヒグマ書店で注文した美術書の入荷連絡だった。
留守電の店員の声はコイケと名乗る男の声で、あそこで働いている芽依ではなかった。
正直、芽依ではなくて安堵していた。彼はヒグマ書店からの電話にわざと出なかった。
もし書店からの連絡係が芽依であれば、沙耶との話の後も何事もなかったように装っていた無表情の仮面が崩れてしまっていたかもしれない。
注文した本の入荷連絡が来ても今から書店に引き取りに行く気にはなれない。芽依は今日はバイトだと言っていた。
書店に行けば彼女と顔を合わせてしまう。
横断歩道の信号が青に変わる。進めの青に従って横断歩道を渡り、三軒茶屋駅まで歩いた。
三軒茶屋から千駄ヶ谷の自宅に到着した頃には、日も落ちて辺りは闇に包まれていた。
芽依のために購入したココアパウダーの袋がキッチンの棚に残っている。自分では飲まないココアの粉は芽依がいなければ減らない。
芽依がこの家にくることはもうない。彼女がそれを望んでいたとしても、でも……と赤木は迷っていた。
自分のためだけのコーヒーを作る。重たい身体をソファーに沈めてコーヒーを飲んでいた赤木はそのままうたた寝をしてしまった。
彼を眠りから呼び覚ましたのは不快な電子音。マナーモードのままだったスマートフォンがテーブルの上で震えている。
10分ほど意識を手放していたらしい。寝起きのぼんやりとした視界で着信表示を眺めると、着信は非通知だった。
『はい……』
{赤木奏さんですね?}
『どちら様ですか?』
非通知の主は知らない男の声だった。
{10年前の事件のことで話がある。今すぐ外に出て来られるか?}
非通知の男の呼び出しに赤木は応じた。自宅を出るとマンションの前の大通りに黒い車が停まっていた。
歩きながら留守電を聞く。内容はヒグマ書店で注文した美術書の入荷連絡だった。
留守電の店員の声はコイケと名乗る男の声で、あそこで働いている芽依ではなかった。
正直、芽依ではなくて安堵していた。彼はヒグマ書店からの電話にわざと出なかった。
もし書店からの連絡係が芽依であれば、沙耶との話の後も何事もなかったように装っていた無表情の仮面が崩れてしまっていたかもしれない。
注文した本の入荷連絡が来ても今から書店に引き取りに行く気にはなれない。芽依は今日はバイトだと言っていた。
書店に行けば彼女と顔を合わせてしまう。
横断歩道の信号が青に変わる。進めの青に従って横断歩道を渡り、三軒茶屋駅まで歩いた。
三軒茶屋から千駄ヶ谷の自宅に到着した頃には、日も落ちて辺りは闇に包まれていた。
芽依のために購入したココアパウダーの袋がキッチンの棚に残っている。自分では飲まないココアの粉は芽依がいなければ減らない。
芽依がこの家にくることはもうない。彼女がそれを望んでいたとしても、でも……と赤木は迷っていた。
自分のためだけのコーヒーを作る。重たい身体をソファーに沈めてコーヒーを飲んでいた赤木はそのままうたた寝をしてしまった。
彼を眠りから呼び覚ましたのは不快な電子音。マナーモードのままだったスマートフォンがテーブルの上で震えている。
10分ほど意識を手放していたらしい。寝起きのぼんやりとした視界で着信表示を眺めると、着信は非通知だった。
『はい……』
{赤木奏さんですね?}
『どちら様ですか?』
非通知の主は知らない男の声だった。
{10年前の事件のことで話がある。今すぐ外に出て来られるか?}
非通知の男の呼び出しに赤木は応じた。自宅を出るとマンションの前の大通りに黒い車が停まっていた。