気まぐれヤンキーくんのあまのじゃくな溺愛。
そして何よりも……


「なんか言えよ!!!」


どこのクラスか知らない怒りで満ちた先輩は、私の襟元を力強く握ってくる。


「…っ」


例え女の私でも容赦なく荒い言葉・行動を見せてくる。


それがこの学校の風紀で、当たり前だった。


一見、文武両道な秀才ばかりが集まる誇り高い名門高校に見える慶王高校だけど、


それは一部の集まりで、本当は─────喧嘩で1番を決める不良グループが集まった不良高校。


空気が静まって、ピリピリした近づいたら殺される、とてつもなく絶対絶命な時だった。


───彼が現れたのは。


「あのさ、そこ邪魔」


「!」


「はぁ"!?」


「喧嘩するなら他所でやって。迷惑」


淡々とその場に現れて毒を吐くような低く冷たい声で一言言ってスタスタと教室へ歩いて行った男子。


先輩は、空気を変えた彼にイラつきつつも、周りの「さすが鳳くん!」とまだ昇降口にいた女子数名が彼の姿を見て、乱暴に私を放つ。


竹内くんに対しても「覚えとけよ!!」と定番の悪役セリフを残して、走り去っていった。


それと同時に私はもうその場から去った彼を見て、思わず「あ…」と小さな声で声を溢した。


助けてくれた……?


……いや、自分の時間に他人の騒がしい雑音が耳に入って迷惑だったから、きっと文句言ったんだろうな…。


今日も相変わらずマイペースだな、鳳くん。


彼の名前は、鳳亮(おおどりまこと)くん。


いつも遅刻するか欠席するか早退するか、その日その日の気分次第で決めて学校に来てる超マイペース人。


今日は早起き出来たのか予鈴前に来れたみたい。


ちなみに、鳳くんが遅刻したり欠席したり早退したりする理由のほとんどが「寝不足」らしい。


どうして寝不足なのか詳しくは知らないけど、クラスの女子からの情報では、『夜行性だから夜に眠れない』とか。


鳳くんらしいな~と思うこともあれば、そんな理由!?とびっくりしてる自分もいる。


というか、夜行性って、…ヴァンパイア…?


いや、それはさすがにこんな現実世界であるわけないか。


でも、鳳くんって、マイペースなだけあって、いつも何考えているかわからないんだよね。
< 2 / 26 >

この作品をシェア

pagetop