ヤンキーを名乗る三人は、トップになりたい!

好き

 誰もいない中庭に、私と黒崎俊は移動した。
 何の話だろうか。もしかして、私が黒崎俊のことを好きなのがバレてしまったとか?
 迷惑……だったらどうしようと不安になる。黒崎俊の瞳がいつもと違っていて、少し怖い。
 黒崎俊は、足を止める。

 「ここでいいか。……突然、悪い」

 「う、ううん」

 「そんな緊張するなよ。緊張してるのは、俺だから」

 うっ、声が上擦ってしまったせいで、緊張しているのがバレていた。
 でも、黒崎俊も緊張しているというのは、どうして……?

 「由薇は、誰がトップになってほしい?」

 「……え?」

 「蒼空? かなで? 他の奴ら? ……それとも、俺?」

 どうして。どうして、そんな話をするの。
 私が誰がトップになってほしいかなんて言ったら、三人のサポーターとして最低にも程がある。
 答えられるわけが、ないのに……!

 「やめてよ、黒崎俊」

 「いや、ただ俺はお前自身の気持ちが聞きたいだけでーー」

 「私は、みんなのことを応援してる。蒼空も、かなでも、黒崎俊も! だから、誰なんて決められないよ。黒崎俊は、こんな話しないと思ってたのにっ」

 だめ。涙が出てきちゃう。
 私……最低。黒崎俊も最低だけれど、その黒崎俊にひどい言葉を言った、私も最低。
 涙を拭こうとすると、黒崎俊がハンカチを差し出してきた。

 「ごめん。そんな苦しめたかったわけじゃない。ただ、俺はーー」

 「……俺は?」

 「……バカで、ドジで。いつも勇敢で、喧嘩なんて一切しない、そんな優しい由薇のことが好きだから。他の人を……応援してほしくないと思ってる」

 その言葉に、私は頭の中が真っ白になる。
 黒崎俊が、私を好き? そんなの、あり得ない……。

 「まぁ、俺たちのサポーターとしての由薇が好きだから。なんて、本当自分勝手でわがままな気持ちだよな」

 「……本当だよ」

 涙で霞んで前がぼやけて見える。
 本当に、本当に黒崎俊なの……?

 「俺は、トップになってこの学園を愛したい。東院を、心から好きになりたい」

 「……うん」

 「トップになったら、俺と付き合って」

 そう言って、黒崎俊は立ち去ってしまった。
 ……バカ。言われなくても……。

 「黒崎俊っ!」

 そう叫ぶと、黒崎俊はピタッと足を止めて私の顔を見てくれた。

 「応援してる、頑張って!!」

 「……あぁ」

 三人のサポーターとして、私は三人のことを応援する。
 だけど天野由薇として、黒崎俊のことを一番に応援してるよーー。
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