ヤンキーを名乗る三人は、トップになりたい!
東院学園
ざわざわ、ざわざわ。
父の転勤の関係で、突然この東院学園の高等部に転校することになったわたし天野 由薇は、早速驚いている。
だってこの学園、共学なはずなのにほぼ男子しかいないんだもの。あれ? 男子校だったっけ? って疑うほど。
もちろん数少ないけれど女子もいる。だけど、大人しそうな子ばかり。それに何だかさっきから私のことをジロジロ見られている気がして視線が痛い。
中等部は見た限り女子も男子も同じくらいいたのに。この学園大丈夫かなぁ、なんて心配になってしまう。
そんなことを考えていると、隣にいた二人組の女の子が「きゃっ」と小さい叫び声を上げた。
「来ちゃったね……」
「うん、今日は静かだといいんだけど」
「きっと無理だよ、あの方たちは“トップ”を狙っているんだから」
盗み聞きはいけないことだと分かっているけれど、ワードが気になってしまう。
ーーあの方たち? 静か? トップ?
勇気がいるけれど、私はその子たちに話しかけてみることにした。
「あの、私今日から転校してきたんですけど」
そう言うと、二人は目を丸くし、青ざめた顔をした。
「あなた、何でここに来ちゃったんですか?」
「え? 何でって」
「とにかく、転校するならここじゃないほうがいいですよ、絶対。悪いことは言わないからっ」
そ、そう言われても制服も教科書も何もかも、全部買っちゃったんだけど。
必死になる二人を何とか落ち着かせ、先ほど言っていた不思議なワードの意味を聞いてみることにした。
「この学園には、トップの座というものが存在するんです」
「トップの座?」
「あと一ヶ月後に、トップコンテストというものを開催するんです。三年生の男女関係なく、参加権があります。トップになった人は、卒業するまで学園のみんなから愛され、校則を決めることができて……という、学園を思い通りにできます。いわゆる王様みたいな存在です」
トップコンテスト。
トップになった人は王様のような存在になれるだなんて、変わった学園だなと思う。それに卒業するまでだから、実質トップは十ヶ月ほどということになる。
というか三年生しか参加権がないってことは、私と同い年の子なんだーー。
「今年は……本当に、やばいんです」
「やばいって、何でですか?」
二人は口を固く閉じるが、やがて話してくれた。
「ーーヤンキーばかり、エントリーしているんです」
「や、ヤンキー?」
唖然としてしまう。
別にヤンキーだろうが何だろうが、エントリーなんか関係ない気がするけれど。
だけど二人は、また青ざめた顔をする。
「この学園の噂知ってますか?」
「いえ……」
「この町で一番、不良な学園だと言われているんですよ」
どくん、と心臓が跳ねる。
この町一番の不良な学園だなんて、さすがに不気味というか、恐怖心があるというか。ぱっと見ただけではそう見えなかったから、とても驚いてしまう。
二人は三人の男子を指差しながら、ひとりひとり紹介してもらった。
「黒崎 俊先輩、白柳 蒼空先輩、赤塚 かなで先輩」
先輩と言っているあたり、この子たちは下級生らしい。
白柳蒼空。肩を過ぎるくらいの髪の長さで、一番大人しそう。紫色のヘッドフォンもしていて、自由に過ごしてる感じがする。
赤塚かなで。可愛らしい顔だから、ヤンキーには見えない。いろいろな人に手振ってるし……一番話しやすそうだと思った。
そして、黒崎俊。この人だけは、何だかオーラが違う。通りすがる人みんなのことを睨んでいて、ダントツでヤンキーって感じ……。
「しかもみんな三年B組だから、三年B組の人は大変みたいですよ」
「え、三年B組? 私もそうなんだけど……」
「えっ! うわぁ、災難ですね。これから覚悟しといたほうがいいと思いますよ」
ごくりと唾を呑み込む。
この人たち、そんなにヤンキーなんだ。分からないけれど一応覚悟はしておこうと思った。
だけど、三人は私の想像以上に、やばいヤンキー集団でした。
父の転勤の関係で、突然この東院学園の高等部に転校することになったわたし天野 由薇は、早速驚いている。
だってこの学園、共学なはずなのにほぼ男子しかいないんだもの。あれ? 男子校だったっけ? って疑うほど。
もちろん数少ないけれど女子もいる。だけど、大人しそうな子ばかり。それに何だかさっきから私のことをジロジロ見られている気がして視線が痛い。
中等部は見た限り女子も男子も同じくらいいたのに。この学園大丈夫かなぁ、なんて心配になってしまう。
そんなことを考えていると、隣にいた二人組の女の子が「きゃっ」と小さい叫び声を上げた。
「来ちゃったね……」
「うん、今日は静かだといいんだけど」
「きっと無理だよ、あの方たちは“トップ”を狙っているんだから」
盗み聞きはいけないことだと分かっているけれど、ワードが気になってしまう。
ーーあの方たち? 静か? トップ?
勇気がいるけれど、私はその子たちに話しかけてみることにした。
「あの、私今日から転校してきたんですけど」
そう言うと、二人は目を丸くし、青ざめた顔をした。
「あなた、何でここに来ちゃったんですか?」
「え? 何でって」
「とにかく、転校するならここじゃないほうがいいですよ、絶対。悪いことは言わないからっ」
そ、そう言われても制服も教科書も何もかも、全部買っちゃったんだけど。
必死になる二人を何とか落ち着かせ、先ほど言っていた不思議なワードの意味を聞いてみることにした。
「この学園には、トップの座というものが存在するんです」
「トップの座?」
「あと一ヶ月後に、トップコンテストというものを開催するんです。三年生の男女関係なく、参加権があります。トップになった人は、卒業するまで学園のみんなから愛され、校則を決めることができて……という、学園を思い通りにできます。いわゆる王様みたいな存在です」
トップコンテスト。
トップになった人は王様のような存在になれるだなんて、変わった学園だなと思う。それに卒業するまでだから、実質トップは十ヶ月ほどということになる。
というか三年生しか参加権がないってことは、私と同い年の子なんだーー。
「今年は……本当に、やばいんです」
「やばいって、何でですか?」
二人は口を固く閉じるが、やがて話してくれた。
「ーーヤンキーばかり、エントリーしているんです」
「や、ヤンキー?」
唖然としてしまう。
別にヤンキーだろうが何だろうが、エントリーなんか関係ない気がするけれど。
だけど二人は、また青ざめた顔をする。
「この学園の噂知ってますか?」
「いえ……」
「この町で一番、不良な学園だと言われているんですよ」
どくん、と心臓が跳ねる。
この町一番の不良な学園だなんて、さすがに不気味というか、恐怖心があるというか。ぱっと見ただけではそう見えなかったから、とても驚いてしまう。
二人は三人の男子を指差しながら、ひとりひとり紹介してもらった。
「黒崎 俊先輩、白柳 蒼空先輩、赤塚 かなで先輩」
先輩と言っているあたり、この子たちは下級生らしい。
白柳蒼空。肩を過ぎるくらいの髪の長さで、一番大人しそう。紫色のヘッドフォンもしていて、自由に過ごしてる感じがする。
赤塚かなで。可愛らしい顔だから、ヤンキーには見えない。いろいろな人に手振ってるし……一番話しやすそうだと思った。
そして、黒崎俊。この人だけは、何だかオーラが違う。通りすがる人みんなのことを睨んでいて、ダントツでヤンキーって感じ……。
「しかもみんな三年B組だから、三年B組の人は大変みたいですよ」
「え、三年B組? 私もそうなんだけど……」
「えっ! うわぁ、災難ですね。これから覚悟しといたほうがいいと思いますよ」
ごくりと唾を呑み込む。
この人たち、そんなにヤンキーなんだ。分からないけれど一応覚悟はしておこうと思った。
だけど、三人は私の想像以上に、やばいヤンキー集団でした。