ヤンキーを名乗る三人は、トップになりたい!
喧嘩
教室に足を踏み入れて早々、私はこの学園がどれだけ不良なのか分かった気がした。
男子は机の上に油性ペンで落書きをしたりとか、暑さでワイシャツを脱いで、上半身裸になっている子もいる。女子はビクビク怯えながら、本を読みながら大人しく座っている子ばかり。
そんな中、一人の女の子が私のもとへ駆けてきた。
「おはよう! 転校生だよね?」
「えっ、はい」
「だよね。私、坂本 杏です。よろしくね」
少し髪が茶色で、ふんわりボブ。まさに美少女って感じでかわいい……!
転校生の私に真っ先に話しかけてくれるなんて、性格もとてもいい。
「天野由薇です。よろしくね、坂本さん」
「杏でいいよ、由薇ちゃん!」
「……杏ちゃん」
名前で呼ぶなんて何だか恥ずかしいけれど、杏ちゃんの笑顔を見たら心躍るように嬉しくなった。
早朝から男子たちの喧嘩は始まっていて、私と杏ちゃんはトップコンテストに応募している三人を目で追っていた。
「白柳さぁ、喧嘩売ってんの?」
「俺は別に喧嘩売ってないけど」
「はぁ? 何、ビビってんの?」
「俺が本気出すとあんたなんか一発だからさ、喧嘩売らないように“してあげてた”んだけど。俺がビビる? 笑わせんなよ」
白柳蒼空、強い……!
一見落ち着いているように見えるのに、本当は喧嘩にとても強いのかもしれない。
それでもクラスメイトと喧嘩しないように手を出さないのは、内心は優しいのだと思う。
「ねぇ、僕何かしちゃった?」
「何かしたじゃねぇよ。昨日俺らがタバコ買ったのを※センコーにチクったの、赤塚だろ?」
※この男子のいうセンコーとは、先生のこと
「んー、そうだけどなに? だって僕、犯罪は嫌いだもーん」
「ヤンキーなのにいい子ちゃんぶるの、まじでウザい」
赤塚かなでも、結構強い……!
確かに一番ヤンキーに見えないもの。ちゃんと犯罪を先生に報告するという、当たり前のことができている。
赤塚かなでは、そんなに怖くないかな。
「おい、お前、今ぶつかったろ」
「へ?」
不意に声を掛けられて後ろを振り向くと、私はびっくりしてしまう。
ーーふえぇ、黒崎俊じゃん!
ていうかこの人、何て言った? 私がぶつかった?
「私、ずっとここで立ってましたけど」
「あぁ、だから俺にぶつかっただろ」
「いや、あなたがぶつかってきたんじゃないですか?」
「ゆ、由薇ちゃんっ」
杏ちゃんに止められて慌てて口を閉じるけれど、もう遅い。何をしてしまったのか自分でもよく分かる。
私、黒崎俊に喧嘩売っちゃった……!?
心のなかでどうしよう、どうしようと焦る。
「お前、自分の立場分かってる?」
ん? でもよく考えてみて。
私が何か悪いこと言ってしまっただろうか。私はただ立っていただけで、黒崎俊がぶつかってきただけじゃない?
つまり私は何もしていない。
「うん、分かってるよ」
「は?」
「私はごく普通の女子高校生だけど。黒崎俊、あなたもただの男子高校生だよね?」
黒崎俊は、唇をピクッと動かす。
「ていうか私、ただ立っていただけで何であなたに怒られなければならないの? ……人に迷惑をかけないかっこいいヤンキーなら、私は好き。だけどあんたみたいに自分勝手で理不尽なヤンキーは、大嫌いだから」
あっかんべー、だ。
私はそんな小学生、いや幼稚園生みたいなことをして、教室を出た。
そしてすぐだった。
天野由薇は“東院唯一の女子高校生”だと、学園中に広まったのは。
男子は机の上に油性ペンで落書きをしたりとか、暑さでワイシャツを脱いで、上半身裸になっている子もいる。女子はビクビク怯えながら、本を読みながら大人しく座っている子ばかり。
そんな中、一人の女の子が私のもとへ駆けてきた。
「おはよう! 転校生だよね?」
「えっ、はい」
「だよね。私、坂本 杏です。よろしくね」
少し髪が茶色で、ふんわりボブ。まさに美少女って感じでかわいい……!
転校生の私に真っ先に話しかけてくれるなんて、性格もとてもいい。
「天野由薇です。よろしくね、坂本さん」
「杏でいいよ、由薇ちゃん!」
「……杏ちゃん」
名前で呼ぶなんて何だか恥ずかしいけれど、杏ちゃんの笑顔を見たら心躍るように嬉しくなった。
早朝から男子たちの喧嘩は始まっていて、私と杏ちゃんはトップコンテストに応募している三人を目で追っていた。
「白柳さぁ、喧嘩売ってんの?」
「俺は別に喧嘩売ってないけど」
「はぁ? 何、ビビってんの?」
「俺が本気出すとあんたなんか一発だからさ、喧嘩売らないように“してあげてた”んだけど。俺がビビる? 笑わせんなよ」
白柳蒼空、強い……!
一見落ち着いているように見えるのに、本当は喧嘩にとても強いのかもしれない。
それでもクラスメイトと喧嘩しないように手を出さないのは、内心は優しいのだと思う。
「ねぇ、僕何かしちゃった?」
「何かしたじゃねぇよ。昨日俺らがタバコ買ったのを※センコーにチクったの、赤塚だろ?」
※この男子のいうセンコーとは、先生のこと
「んー、そうだけどなに? だって僕、犯罪は嫌いだもーん」
「ヤンキーなのにいい子ちゃんぶるの、まじでウザい」
赤塚かなでも、結構強い……!
確かに一番ヤンキーに見えないもの。ちゃんと犯罪を先生に報告するという、当たり前のことができている。
赤塚かなでは、そんなに怖くないかな。
「おい、お前、今ぶつかったろ」
「へ?」
不意に声を掛けられて後ろを振り向くと、私はびっくりしてしまう。
ーーふえぇ、黒崎俊じゃん!
ていうかこの人、何て言った? 私がぶつかった?
「私、ずっとここで立ってましたけど」
「あぁ、だから俺にぶつかっただろ」
「いや、あなたがぶつかってきたんじゃないですか?」
「ゆ、由薇ちゃんっ」
杏ちゃんに止められて慌てて口を閉じるけれど、もう遅い。何をしてしまったのか自分でもよく分かる。
私、黒崎俊に喧嘩売っちゃった……!?
心のなかでどうしよう、どうしようと焦る。
「お前、自分の立場分かってる?」
ん? でもよく考えてみて。
私が何か悪いこと言ってしまっただろうか。私はただ立っていただけで、黒崎俊がぶつかってきただけじゃない?
つまり私は何もしていない。
「うん、分かってるよ」
「は?」
「私はごく普通の女子高校生だけど。黒崎俊、あなたもただの男子高校生だよね?」
黒崎俊は、唇をピクッと動かす。
「ていうか私、ただ立っていただけで何であなたに怒られなければならないの? ……人に迷惑をかけないかっこいいヤンキーなら、私は好き。だけどあんたみたいに自分勝手で理不尽なヤンキーは、大嫌いだから」
あっかんべー、だ。
私はそんな小学生、いや幼稚園生みたいなことをして、教室を出た。
そしてすぐだった。
天野由薇は“東院唯一の女子高校生”だと、学園中に広まったのは。