ヤンキーを名乗る三人は、トップになりたい!

私が!?

 「おい、お前」

 昼休み。杏ちゃんが図書室に行っていて、私一人で中庭にいたとき。
 誰かに不意に声を掛けられた。

 「だめだよ、俊。女の子をそんな風に呼んじゃ〜」

 「女とか男とか、関係なくない?」

 「あはは、蒼空はもうちょっと人間関係大切にしよ」

 私はびっくりして思わず後退りする。
 ーー赤塚かなでと、白柳蒼空と、黒崎俊だー!!
 黒崎俊は嫌そうに私を睨みながら、一歩ずつ近づいてくる。

 「昨日はどうも。よくもあんなこと言ってくれたな」

 「うっ。ご、ごめんなさいっ」

 ……反射的に、謝ってしまう。

 「お前、名前は?」

 「へ? あ、天野由薇……です、けど」

 同じクラスなのに名前を覚えてもらっていなかったことが、結構ショック。
 やっぱり昨日の出来事のせいだよね。もしかして名前を聞いたから、この学園から私を追放するとか?
 そんな恐ろしいこと、黒崎俊ならあり得るかも……。

 「へぇー、ゆらちゃんって言うんだ! 漢字どう書くの?」

 「えっと、由来の由に、薔薇の薇です」

 「可愛いね!」

 ありがとうございます、と小さく呟いた。
 赤塚かなではやっぱりこの三人のなかで、一番話しやすい。一緒にいて雰囲気もあたたかいし。
 黒崎俊が突然私のほうを向いて、口を開いた。

 「あんた、トップコンテストは知ってるか?」

 「はい、聞きました」

 「……そうか。かえで、蒼空、決定でいいか」

 「うん、僕はいいよ。この子気に入っちゃった!」

 「俺は誰でもいい」

 ……ん? 決定したって、何が?
 さっぱり意味不明で、立ち尽くしていると。

 「俺たちがそのトップコンテストに応募したのも、知ってるな。お前が……俺たち誰かを優勝させるために、サポーターになってくれ」

 「……は?」

 三人の誰かを優勝させるために、私がサポーターになる?
 黒崎俊、何を言っているの?
 不思議に思っていたら、白柳蒼空が説明してくれた。

 「優勝はもちろん一人しかできない。俺たちはそれぞれ叶えたい夢があって、本気で優勝を目指してる。だからあんたにサポートしてもらいたいってわけ」

 「そうそう! ね、由薇ちゃん、いいでしょ?」

 「い、いいでしょって言われても。だいたい何で私?」

 「何となく、お前地味だし。それに名前に薔薇の薇が入ってるとか、結構好きだから」

 なっ! それ、私の名前が好きってこと?
 ていうか地味って、本当黒崎俊って失礼すぎるんだけど。

 「やっぱり私、黒崎俊はヤンキーに見えない」

 「……は? お前、喧嘩売ってーー」

 「だからね。私が本物のヤンキーにさせてあげてもいいよっ」

 冗談交じりでそう言うと、「ははっ」と黒崎俊が笑った。
 ドキッ、とする。

 「おもしれーじゃん。じゃあ今日からよろしくーー由薇」

 「よろしくね、由薇ちゃん!」

 「……天野、よろしく」

 黒崎俊と白柳蒼空と赤塚かなで。
 私が三人をサポートすることになっちゃいました……!
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