エンドロールを巻き戻せ

「そっかあ。25歳にして初めての失恋かぁ。
　それはなかなか、胸に刺さるもんがあるわね。大体みんな、中、高生あたりで経験するのに瑞稀は今、まさに失恋の洗礼を受けているのか、、、瑞稀本当にいらないの？私だけスープ頼んじゃうけど。」

　私は「いらない。いらない。」と首を振る。
注文が済んだ香奈が私の方を向いて私に言う。

「よし！OK！瑞稀大丈夫だよ！
失恋なんて、時間薬だから、その死にそうな気持ちも時間がたてば自然となくなって、また一彩みたいに好きな人が出来るわ。大丈夫大丈夫！」

　香奈がいとも簡単というように言ってくる。

「無理だって、私の一彩への思いは、9年間という長い長い思いが詰まっているんだよ。
その辺のぽっとでの恋とは年季が違うんだよ。」

「長い思いっていうか、もはや長い怨念になってるじゃない。
　瑞稀、何でも初めての事は先が見えなくて不安になるもんよ。でも大丈夫。失恋から立ち直れる事は、世の中の大勢の人達が、ちゃんと証明してくれているから。
　初めて付き合った人と結婚する確率は16%くらいしかないらしいよ、84%の人は失恋から立ち直って、別の人と恋愛してるんだよ。」

　16%、、、。
私もその16%に入りたかった。
というか、入るつもりでいたのに、、、。

「なんで、私は16%に入れなかったんだろう。
なんで私は一彩に選ばれなかったんだろう。」

　私は昨日からそんな事ばかり考えては、今までの一彩との恋愛を振り返っていた。
過去を探しても答えが見つからず、結局堂々めぐりのループを繰り返す。

「瑞稀、そんな事考えても意味ないって、理由なんて『一彩に他に好きな人が出来た』それしかないんだから。
今の時点で、一彩にとって、瑞稀よりその会社の子が上なのよ。」

　あまりにも香奈にはっきり言われて私はぐうの音も出ない。

「瑞稀、失恋を攻略していきなさい。そしたらまた恋愛して別れた時、今よりもきっと大丈夫と思えるから。」

「攻略、、、？何それ、どうやるの？ってかもう新しい恋愛とかしたくないんだけど、、、。」

　もう二度とこんな死にそうな思いはしたくない。傷つくくらいなら、恋愛なんかしない方がましだ。

「みんなそう言う。けど、結局新しい彼氏が出来てる。とりあえず、泣くのは辞めてはやくお風呂に入って着替えてきな！」

　そう言われて、私は香奈に無理矢理バスルームに追いやられる。