エンドロールを巻き戻せ
 冗談みたいな話しだが、実際そうなんだから仕方ない。
一彩は私をいつまでもドキドキさせてくれる。
大袈裟な事はしないけど、いつも当たり前の優しさをくれる。
気持ちがさめる理由なんて見当たらない。
私には一彩との未来しかなかった。

 私は、自宅のマンションから歩いて、勤務先の幼稚園へ行く。
このマンションを選んだのは、職場へ歩いて15分くらいで、いける距離だからだ。
 外へ出ると10月なのにまだまだ蒸し暑かった。それでも、朝晩の気温は幾分かましになってきた。

 幼稚園に着いて、ロッカーで着替えていると、同じ職場の一つ年下の優佳先生が私に話しかけてくる。

「瑞稀先生、仕事の後デートですか?可愛いワンピース着て、メイクも気合い入ってますね。」

 優佳先生はとっても鋭い。
ちょっとした私の変化も見逃さない。

「そうなんだ、今日私の誕生日だから夜ご飯外食するんだ。」

 私が言うと、優佳先生は私の顔をじっと見て言う。

「もしかして、瑞稀先生、、、ついに、今日プロポーズされるんじゃないですか!」

 私が期待している事をずばり、言ってくるので、私はわざと期待してない振りをしてしまう。

「いや、どうだろう、、、?それはまだないんじゃないかな?」
 
 私がそう言って誤魔化すと優佳先生が大袈裟に言ってくる。

「何言ってんですか、瑞稀先生!
はっきりさせた方がいいですよ。もう付き合って9年なんだから、せめて結婚する意思があるのかだけでも、聞いた方がいいですよ!」

 優佳先生の言う事もよくわかる。
確かに、私達は付き合ってもう10年目に入る、
そろそろ次の関係へとステップアップしてもいい頃だ。
 周りの友達にも同じように言われるが、私は全然心配していなかった。
何故ならば、一彩に対する絶大の信頼があったからかもしれない。
一彩は私を悲しませる事はしない、それは私と一彩の長い付き合いの中で、私が確信していた事だ。
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