エンドロールを巻き戻せ
 その日の仕事は、普段の百倍頑張れた。
園児同士の揉め事も、保護者からのクレームもなんでもこいっ!
という感じで、とにかく十七時の退勤目指してひたすらに駆け抜けていった。
 それでも、私は仕事の時間が長く感じ、何度も何度も時計を確認した。
 やっと仕事を終えて、最寄りの駅から電車に飛び乗ると、私は手鏡で自分の顔を見て最終チェックをする。
 ロッカーでメイクは直してきたので大丈夫!
私はこれからおこるであろう、一大イベントに向けて、呼吸を整えていた。

もし、プロポーズされたら返事は何てする?
そんな事まで妄想しはじめる始末だ。

『はい』
『よろしくお願いします』
『私も一彩と結婚したい』
『はい!喜んで!』

ちょっと居酒屋っぽいか、、、そんなくだらない事を考えてるだけで、私はこの電車の車両の中で一番の幸せ者だと言い切れる。
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