エンドロールを巻き戻せ
 それは、一彩から私への地獄への通達だった。

私は一彩の発した言葉の意味が理解できず、何も言えなくなる。
 ただ一つ言えるのは、これはプロポーズなんか、、、じゃない。


「瑞稀、悪いけど俺と別れてほしい。」


 意味がわからなかった。
今日は、私の25回目の誕生日。
今までの人生で一番幸せな日になるはずだった。

 こんなの、おかしいって。とても現実に起きている事とは理解出来なかった。
私は喉の奥から何とか声を絞り出す。

「どうして、、、?私なんか一彩にした?」

 私は自分のバックを強く握りしめる。
そうすることで、自分の涙が出ないように必死に抑えていた。

「瑞稀は何も悪くないよ。俺が悪いんだ。同じ会社の子で、好きな子が出来たんだ。だから、、、ごめん」

そんな事急に言われても、納得いかないよ。
だって、一彩はずっと変わらなかったじゃない。
今の今まで私に愛の言葉をくれて、優しく触れてくれた。

 それなのに、本当はもう私に気持ちはなかったの?
だとしたら、一彩は大嘘つきだよ。
私は今までと変わらず一彩に愛されてると信じて疑わなかった。

 一彩の申し訳なさそうな顔が、車のライトに照らされる。

何故かとても辛そうに見えた。

9年も一緒にいて、一彩の心の変化になんで気づけなかったのか。

「急にそんな事言われても、私わかんないよ、、、。」

私は抑えていた涙が自分の意思とは反対にどんどん溢れてくる。

「ごめん。びっくりさせて。」

 そう言って一彩がまた謝る。
そんな言葉が聞きたいわけじゃない。
今からでもいいから、これは冗談だったと、
いつもの笑顔で言ってほしい。

そうしたら、私はいくらでも一彩を許すから。

無理だよ。

私の前から一彩がいなくなるなんて、そんな世界にとても私は生きていけないよ。

「私悪い所があったら、直すよ。ちゃんと、また一彩に好きになってもらえるように頑張るよ。だから、、、だから、お願い、別れるなんて言わないで。」

 私は、一彩の腕を掴む。
情けない。別れてほしいと言われた恋人にすがりつくなんてみっともないと、ドラマを見ていて思っていた。
まさか自分がこんな事になるなんて、、、。
別れ話しを切り出した恋人にすがりついても、どうなるかは大体決まっている。

一彩は、私の手を自分の腕から離して言った。

「ごめん。もう無理なんだ。」

 その瞬間に、私の失恋は決定した。
覆す事のできない、これは決定事項だ。

「、、、どうして?」

私は最後に聞きたかった。

「どうして、今日なの?今日は、、、私の誕生日だよ?」

 何もこんな日に、別れ話を言う事ないじゃない。

「ごめん。最後に、瑞稀の誕生日を盛大に祝いたかった。」

一彩が頭を下げる。

私は、それを見て心底思った。



───そんな優しさ、私いらない───

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