呪われた村娘は王子様から溺愛されて死を選ぶ

プロローグ 語られない歴史

 祈りが人を強くするのか。人の気持ちが祈りを強くするのか。

 祈り、願い。人は神に語りかけ願掛けをする。自身や周りの大切な人のために祈り幸福を願う。
 そのなかには祈りや願いを呪いとして悪用する人物もいる。呪いは自己の欲求を叶えるため恨みを晴らすために人を傷つけ、不幸にする。

 遙か昔。呪いを魔術のように極めた人物が現れた。その人物は魔術王と呼ばれ恐れられた。
 その人物は呪いの力で国ひとつを滅ぼした。その国で新たに自身の国を築き、信者という名の国民を集い勢力を強めている。
 滅ぼされた国の同盟国が協力して滅ぼそうとしたが、その国の王となった魔術王に呪うと脅され進軍できず後退する。

 魔術王にひとりきりで立ち向かった王がいた。勇敢な王は呪いを恐れはしなかった。しかし呪いは矛先を変えて降りかかった。
 「愛する者からの愛。それを苦しみに変えた」
 呪われたのは王ではなく、最愛の王妃に呪いがかけられた。王はどうすることもできず、王妃と距離を置き顔を合わせない日々が長く続いた。
 呪われた王妃は最愛の王に愛されなくなり、胸を痛ませた。その痛みは呪いによって本当の病になり、身体をむしばんでいった。
 王妃は王に愛されたいと願いながらも、その願いは届かなかった。孤独な王妃は病によって一人寂しく息を引き取った。
 最愛の王妃の死に憔悴した王は王妃の仇である魔術王が目の前にいるにも関わらず、立ち向かえなかった。
 同盟国の王たちが駆けつけた時には遅く、王は抵抗もなくあっさりと魔術王に倒されてしまった。
 それを目撃した同盟国の王たちは魔術王に刃向かうことができなくなった。

 魔術王は今もその勢力を伸ばし、各国の侵略を企てている。
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