呪われた村娘は王子様から溺愛されて死を選ぶ
　ベランジェは変わっていく記憶と思い出が許せず抗い、クラルテを記憶の奥から思い出す。ウェディングドレスを着た人形の素体を無理矢理クラルテに置き換える。
　ベランジェは結婚式でクラルテと愛を誓う。愛を誓った結果、クラルテにかけられた呪いが作用してクラルテは倒れてしまう。
　「愛する者からの愛、それを苦痛に変えた。愛する者を傷つけ守る事もできない」
　頭の中で宿敵の声が聞こえる。クラルテへ愛を誓った結果、傷つけ失ってしまった。
　屋敷でのこと、結婚式でのこと。ベランジェは愛するクラルテを守るどころか、傷つけることしかできなかった。
　「うわあぁっ……！」
　ベランジェは剣を落として叫び、激しい焦燥感に襲われ膝をつく。自ら失う原因を作ってしまい失望する。
　「やっと自分の無力さを思い知ったようだね」
　レノーレジスは床に転がっているベランジェの剣を拾って手に取ると、ベランジェの首元へ向ける。
　「アデュー。永遠にさようなら、王子様」
　レノーレジスがベランジェの首元に剣を振り下ろそうとした時、どこからかフライパンがレノーレジスめがけて飛んできた。不意をつかれたレノーレジスはフライパンによけると同時にベランジェの剣を落とす。
　「ベランジェ王子様しっかりしてください！　クラルテ様を守れるのはあなた様だけです！」
　マノンがベランジェへ叫ぶ。マノンが護身用に持ってきたフライパンをレノーレジスへ投げたのだった。レノーレジスは叫んだマノンとその隣にいるアルフレッドに驚いた表情をする。
　「クラルテを守る……」
　ベランジェは左手に結びつけたハンカチを見つめる。クラルテが村で手当てをしてくれた時のハンカチだ。返そうと思っていたが返しそびれていた。
　クラルテの故郷の村でプロポーズをして守ると誓った。書き換えられた村でのことがクラルテとの思い出に戻っていく。
　「ベランジェ様が見ているのは幻覚です。目の前の魔術王を倒してください！」
　今度はアルフレッドがベランジェへ叫ぶ。
　「端役の分際が。命知らずが二人もいるのか」
　レノーレジスは想定外の登場に二人を睨み、落としたベランジェの剣を拾おうと急ぐ。
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