呪われた村娘は王子様から溺愛されて死を選ぶ
王都へ着くまでクラルテとベランジェは色々な話をした。
クラルテは自分が育った田舎のこと。育ててくれた父のこと。個性豊かな老牧師や村人達のことを話した。
ベランジェは親族で女性が多く、父と一緒に気を遣って大変ということ。女王として国を統治している母は気難しく、父に話し合いを仲裁されたこと。ロズリーヌはクラルテと歳が近く、通っている学院で自由にやっていること。
「楽しそうで羨ましい。早くベランジェのご家族にお会いしたいな」
「きっと仲良くなれるだろう。俺がこの前クラルテと出会った時の怪我もすっかり良くなったぞ。クラルテの手当てのおかげだ。ありがとう。俺はあの時に見たクラルテの事を天使とーー」
そう言いかけるとクラルテは馬車の窓の外を歓声上げて眺める。
「ベランジェ、見て! 街よ!」
自然ばかりだった馬車は王都へ入り王城へ進んでいく。ベランジェにとっては見慣れた街並みだがクラルテにとっては初めて見る景色だった。
民家が密集し、多くの人々が立ち止まりこちらを見ている。
「王都に入ったな。俺が未来の王妃を連れ帰ったと見ているんだ」
「わたしが……未来の王妃?」
「俺は第一子で王位を継ぐことになっている。言ってなかったか?」
クラルテは「言っていない」と言わんばかりのこわばった顔をする。
「いまの女王様、ベランジェのお母様が女王様なのよね?」
「ああ、あとで謁見の間にて挨拶をする」
「えっけんのま……」
どのような場所なのか想像もつかない。クラルテは緊張して言葉を繰り返す。
「今回は俺の身内しかいないから安心しろ」
ベランジェは気休めを言ってくれているのだろうが、クラルテはすでに緊張している。
王城へ着き、馬車を降りて謁見の間へ向かうと、ベランジェの母である女王は険しい表情で二人を待っていた。
「女王様、謁見の機会をありがとうございます。わたくしの花嫁となる女性を連れ帰って参りました。クラルテ・ドヌーヴ嬢です」
クラルテは名前を名乗り、お辞儀をする。クラルテに視線を向けるとより一層険しい顔をする。
「無事の帰還を嬉しく思います。話があるのでわたくしの応接室へ二人でいらっしゃい」
女王はそれだけ言うと退席する。
「かしこまりました」
ベランジェは特に気にする様子もなく答える。クラルテはどうなってしまうのかと緊張と焦りでいっぱいになっている。
クラルテとベランジェは女王の応接室へやってきた。ベランジェの父である殿下も同席し、女王はそわそわと部屋の中を歩きながら立って二人を待っていた。
応接室へ入ると、女王によって挨拶もなしに話が進められる。
「こちらの方があなたが婚約した娘なのですね?」
女王はじっとクラルテを鋭い視線で見つめる。クラルテはそに視線にたじろぐ。
「クラルテ・ドヌーヴ嬢です。私が婚約した女性です」
ベランジェはクラルテを女王へ紹介する。
「あなたがこのような女性が好みとは知らなかったわ。隣国の王女が似た容姿をしてたんじゃないかしら。そちらの方にしては?」
「女王様。いえ、母上。クラルテ嬢は私にとって唯一無二の愛する女性です。容姿が好みというだけではありません」
「あなたは生まれた時からわたくしに手を焼かせてきましたね。最後まで焼かせる気ですか?」
「大まかなことは従ってきました。しかし彼女との結婚だけは譲れません」
しばらく沈黙が流れ、クラルテは居心地悪くベランジェと女王を交互に見ている。
「怒る気も失せました」
女王は一層険しい顔をして大きい溜め息を吐く。
「誰に似たのかしら」
ベランジェの父は慰めるように女王の肩に手を置く。
「女王は僕を選んでくれたじゃないか」
「あなたは男爵でこの娘は……。もういいわ」
女王は諦め、言葉を続ける。
「昔の自分を見ているようで、危なっかしくて心配だったの。クラルテ・ドヌーヴ嬢、あなたを歓迎します」
ベランジェとクラルテは明るい声で同時にお礼を伝える。
クラルテはベランジェの両親から結婚の許しをもらい、安心した気持ちでベランジェと一緒に城の廊下を歩いている。
「お兄様!」
一人の美しい女性がベランジェに可愛らしく声をかける。ベランジェの妹、ロズリーヌ・アイリス・レスプラォンディールがやってきた。
ロズリーヌはベランジェと同じ髪色をしており、長い髪はウェーブがかっている。すらっと背が高く華奢、瞳は大きく宝石のような緑色をしている。
ロズリーヌはクラルテをチラリと見て話し出す。
「お兄様、おかえりなさい。この子がお兄様の婚約者?」
ベランジェは「そうだ」とうなずく。
「やったー! わたくし、妹が欲しかったの。わたくしの身内は姉妹ばかりなのよ。だから姉妹でお出かけとか、恋バナとか憧れてたの。わたくしはロズリーヌ・・アイリス・レスプラォンディールと申します。これからよろしくね! お名前は?」
ロズリーヌは丁寧にお辞儀をし、嬉しそうにクラルテの両手を握る。
「クラルテ・ドヌーヴです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「クラルテとロズリーヌは歳も近いだろう。妹と仲良くしてやってくれ」
クラルテの身の回りが一気に賑やかになる。ベランジェの素敵な家族に歓迎されて嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「ベランジェのご家族は素敵な方たちね。羨ましい」
父を亡くしてから一人だったクラルテ。ベランジェの家族の温かさに触れて羨ましくも嬉しく思った。
クラルテは自分が育った田舎のこと。育ててくれた父のこと。個性豊かな老牧師や村人達のことを話した。
ベランジェは親族で女性が多く、父と一緒に気を遣って大変ということ。女王として国を統治している母は気難しく、父に話し合いを仲裁されたこと。ロズリーヌはクラルテと歳が近く、通っている学院で自由にやっていること。
「楽しそうで羨ましい。早くベランジェのご家族にお会いしたいな」
「きっと仲良くなれるだろう。俺がこの前クラルテと出会った時の怪我もすっかり良くなったぞ。クラルテの手当てのおかげだ。ありがとう。俺はあの時に見たクラルテの事を天使とーー」
そう言いかけるとクラルテは馬車の窓の外を歓声上げて眺める。
「ベランジェ、見て! 街よ!」
自然ばかりだった馬車は王都へ入り王城へ進んでいく。ベランジェにとっては見慣れた街並みだがクラルテにとっては初めて見る景色だった。
民家が密集し、多くの人々が立ち止まりこちらを見ている。
「王都に入ったな。俺が未来の王妃を連れ帰ったと見ているんだ」
「わたしが……未来の王妃?」
「俺は第一子で王位を継ぐことになっている。言ってなかったか?」
クラルテは「言っていない」と言わんばかりのこわばった顔をする。
「いまの女王様、ベランジェのお母様が女王様なのよね?」
「ああ、あとで謁見の間にて挨拶をする」
「えっけんのま……」
どのような場所なのか想像もつかない。クラルテは緊張して言葉を繰り返す。
「今回は俺の身内しかいないから安心しろ」
ベランジェは気休めを言ってくれているのだろうが、クラルテはすでに緊張している。
王城へ着き、馬車を降りて謁見の間へ向かうと、ベランジェの母である女王は険しい表情で二人を待っていた。
「女王様、謁見の機会をありがとうございます。わたくしの花嫁となる女性を連れ帰って参りました。クラルテ・ドヌーヴ嬢です」
クラルテは名前を名乗り、お辞儀をする。クラルテに視線を向けるとより一層険しい顔をする。
「無事の帰還を嬉しく思います。話があるのでわたくしの応接室へ二人でいらっしゃい」
女王はそれだけ言うと退席する。
「かしこまりました」
ベランジェは特に気にする様子もなく答える。クラルテはどうなってしまうのかと緊張と焦りでいっぱいになっている。
クラルテとベランジェは女王の応接室へやってきた。ベランジェの父である殿下も同席し、女王はそわそわと部屋の中を歩きながら立って二人を待っていた。
応接室へ入ると、女王によって挨拶もなしに話が進められる。
「こちらの方があなたが婚約した娘なのですね?」
女王はじっとクラルテを鋭い視線で見つめる。クラルテはそに視線にたじろぐ。
「クラルテ・ドヌーヴ嬢です。私が婚約した女性です」
ベランジェはクラルテを女王へ紹介する。
「あなたがこのような女性が好みとは知らなかったわ。隣国の王女が似た容姿をしてたんじゃないかしら。そちらの方にしては?」
「女王様。いえ、母上。クラルテ嬢は私にとって唯一無二の愛する女性です。容姿が好みというだけではありません」
「あなたは生まれた時からわたくしに手を焼かせてきましたね。最後まで焼かせる気ですか?」
「大まかなことは従ってきました。しかし彼女との結婚だけは譲れません」
しばらく沈黙が流れ、クラルテは居心地悪くベランジェと女王を交互に見ている。
「怒る気も失せました」
女王は一層険しい顔をして大きい溜め息を吐く。
「誰に似たのかしら」
ベランジェの父は慰めるように女王の肩に手を置く。
「女王は僕を選んでくれたじゃないか」
「あなたは男爵でこの娘は……。もういいわ」
女王は諦め、言葉を続ける。
「昔の自分を見ているようで、危なっかしくて心配だったの。クラルテ・ドヌーヴ嬢、あなたを歓迎します」
ベランジェとクラルテは明るい声で同時にお礼を伝える。
クラルテはベランジェの両親から結婚の許しをもらい、安心した気持ちでベランジェと一緒に城の廊下を歩いている。
「お兄様!」
一人の美しい女性がベランジェに可愛らしく声をかける。ベランジェの妹、ロズリーヌ・アイリス・レスプラォンディールがやってきた。
ロズリーヌはベランジェと同じ髪色をしており、長い髪はウェーブがかっている。すらっと背が高く華奢、瞳は大きく宝石のような緑色をしている。
ロズリーヌはクラルテをチラリと見て話し出す。
「お兄様、おかえりなさい。この子がお兄様の婚約者?」
ベランジェは「そうだ」とうなずく。
「やったー! わたくし、妹が欲しかったの。わたくしの身内は姉妹ばかりなのよ。だから姉妹でお出かけとか、恋バナとか憧れてたの。わたくしはロズリーヌ・・アイリス・レスプラォンディールと申します。これからよろしくね! お名前は?」
ロズリーヌは丁寧にお辞儀をし、嬉しそうにクラルテの両手を握る。
「クラルテ・ドヌーヴです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「クラルテとロズリーヌは歳も近いだろう。妹と仲良くしてやってくれ」
クラルテの身の回りが一気に賑やかになる。ベランジェの素敵な家族に歓迎されて嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「ベランジェのご家族は素敵な方たちね。羨ましい」
父を亡くしてから一人だったクラルテ。ベランジェの家族の温かさに触れて羨ましくも嬉しく思った。