呪われた村娘は王子様から溺愛されて死を選ぶ

デート?

 クラルテは王城で忙しく生活している。故郷での、のんびりとした生活が懐かしい。
 故郷でも行っていた朝のお祈りを自室で行い、朝から晩までマナーやダンスレッスン、王宮の歴史や一般教養などを勉強している。
 故郷では読み書きと簡単な計算くらいしか習っていなかった。一般教養もまともにできず、それに加えてマナーやダンスレッスン、王宮の歴史まで学ばなければならず、クラルテの頭はいつ限界を迎えて止まってもおかしくかった。
 もし一人きりだったら故郷に帰りたいと嘆いていた。
 クラルテはこの生活に辟易している。ベランジェとの毎日のお茶の時間だけが支えになっている。
 クラルテは窓から星空を眺めながら、今日のベランジェとのお茶の時間を思い出す。

 ベランジェはクラルテの正面に座っている。クラルテはベランジェに見とれる。
 ベランジェは忙しいだろうに毎夜クラルテの為に時間を作ってくれている。クラルテはベランジェに感謝している。
 「今日も来てくれてありがとう。会えて嬉しい」
 「俺もだ。今日は何をしていたんだ?」
 クラルテが微笑むとベランジェも微笑む。ベランジェは愛想が良い性格ではないが、クラルテの前だと無自覚に表情が柔和になっている。
 「あのね、ダンスの練習で基本ステップができるようになったの! あとダンスの時の姿勢が良くなったと言われたのよ」
 婚約パーティーでベランジェとダンスを踊ると聞き、クラルテはダンス練習には特に力を入れている。ベランジェに恥をかかせられない、おとぎ話の王子様とお姫様のような素敵なダンスをしたいと思っている。
 「そうか。婚約パーティーが楽しみだ」
 ベランジェは微笑み紅茶を一口飲む。クラルテはベランジェのダンスの腕前を質問する。
 「ベランジェはダンス得意?」
 「俺か? どうだろうな。当日のお楽しみだな。クラルテに恥をかかせない技量は持っているぞ」
 「上手いってことかなぁ。早くベランジェとダンスを踊りたいな!」
 クルクルと回り、三拍子で踊る自分とベランジェ。クラルテはそれを想像してニヤニヤとしている。
 「頑張りすぎて怪我をするなよ」
 ベランジェはまた一口紅茶を飲む。クラルテは喋るのに一生懸命でお茶を飲むのを忘れている。
 「あっ! そうよね、気をつけるね」
 怪我をして踊れなくなったら元も子もない。クラルテは気を引き締めて練習に励むことにした。

 (今日もベランジェとのお茶楽しかったな)
 クラルテは先程の事を思い出してニコニコと微笑んでいる。自室になった豪華な部屋の窓に跪いて日課にしている夜のお祈りをする。
 (今日はベランジェとダンスの話をしました。私と婚約パーティーで一緒に踊るのが楽しみと言ってくれました。明日もレッスンとお勉強を頑張ります)
 クラルテは夜のお祈りを済ませ、ベッド脇に置いてある婚約指輪を眺めてからベッドへ入る。
 (明日も会えるといいな。会いたいな)
 ベランジェの優しげな表情を思い浮かべる。クラルテが王城に来てからベランジェは毎日クラルテへ会いに来ている。今日も時間を作って会いに来てくれた。
 お茶をしながらベランジェと今日のできごと話す。先程のように今日あったできごとを話すと笑顔で聞いてくれる。
 ベランジェが会いに来てくれていなかったら、とっくの昔にくじけていた。クラルテはベランジェが支えてくれていることに感謝する。
 (ベランジェ、ありがとう。あなたがいるから頑張れるわ)
 婚約パーティーへ向けて少しでもダンスを上手く踊れるようにを頑張ろうと奮起する。
 クラルテは一人で眠るには十分広いふかふかのベッドに潜り、ベランジェと婚約パーティーで優雅に踊っている姿を想像しながら瞳を閉じる。

 そんなレッスンと勉強漬けのクラルテに朗報が入った。その朗報はいつものベランジェとの夜のお茶の時間に告げられた。
 「ベランジェとデート?」
 クラルテの部屋でベランジェとの毎日の夜のお茶の時間に彼から伝えられた。
 デートという言葉に嬉しくなり顔を赤らめる。プロポーズを受けてから二人でデートのような、どこかへ出かける事をしたことがなかった。
 「デートって恋人が一緒に出かけたりすることだよね。嬉しい!」
 「ここに来てからクラルテも忙しくしているだろう。もっとクラルテと一緒の時間を取りたいと思ってな。当日の予定は任せてくれ」
 クラルテはここに来てから城の外にほとんど出たことがないので、どのような街かもよく分かっていない。クラルテはベランジェとの初めてのデートに胸を躍らせる。
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