呪われた村娘は王子様から溺愛されて死を選ぶ
デート前日の夕方。夕方からのクラルテの予定はキャンセルになり、ロズリーヌと会う予定になっている。ロズリーヌがそう約束を取り付けた。明日はベランジェとデートということで一緒に服を選んでくれることになっている。
クラルテは豪華な応接室でロズリーヌを待っている。ドアがノックされ、ロズリーヌが声をかけてくる。
「クラルテさん、わたくしよ。いらっしゃるかしら?」
クラルテはドアを開けると、ロズリーヌと上品な年配の男性が鞄を持ってロズリーヌの後ろに立っている。
「ごきげんよう。こちらの方は城でドレスなどをデザインする専属の仕立屋さんでデザイナー部門に所属されている責任者の方よ」
クラルテと仕立屋はお互いにお辞儀をする。
「クラルテさんの婚約パーティーのドレスと結婚式のウエディングドレスを担当してくださるわ。そのうち打ち合わせがあると思うけど」
「よろしくお願いします」
ドレスを作ってもらうなんて緊張してしまう。クラルテはもう一度お辞儀をする。
「普段着はお弟子さんたちが作っているのよ。どれも素敵だから見てみるといいわ」
仕立屋は鞄から様々な色とデザインの服を出してクラルテに見せる。淡い色を使った可愛らしい服や濃くハッキリとした色を使った大人っぽい服。
「ごめんなさい。どれも素敵だけど、どれがいいか分からない」
どれも素敵だが、クラルテは田舎の小さな村で育ったためファッションやお洒落がよく分からなかった。
「好きなお色は何でございましょう?」
仕立屋がクラルテに質問をする。クラルテは「ピンク」と答える。
「こちらのお洋服はいかがでしょう?」
仕立屋はフリルが多く淡いピンクの可愛らしいドレスを勧める。
「こんなに素敵なものをわたしが着ていいの?」
「もちろんよ。そのために選んでもらってるのだから。気に入ったかしら?」
クラルテは笑顔でうなずく。仕立屋が頭を深く下げて礼を言う。
「決定ね。きっと可愛いわよ」
「サイズや丈は問題なさそうですね。私はこれで失礼させていただきます」
仕立屋は熟練の経験で見ただけで洋服とサイズが合うか分かるようだ。
「今日はありがとう。助かったわ」
「ありがとうございます」
ロズリーヌに次いでクラルテも礼を言う。仕立屋は服を片付けてドアの前で一礼をして出て行った。
クラルテはロズリーヌのに誘われ、そのままこの応接室でお茶をすることになった。ロズリーヌがメイドを呼び、お茶を持ってきてもらった。
「お洋服が決まってよかったわ。クラルテさん。ここに来てから、お兄様と初デートよね!」
ロズリーヌは紅茶を飲みながら嬉しそうに話す。クラルテは初デートと言われ照れて紅茶を一口飲む。
「よかったら後でデートした時のお話聞かせてくれるかしら。楽しみに待ってるわ」
デートの様子を話すなんて照れて恥ずかしい。しかし嬉しかった話を聞いてくれる人がいる感覚を懐かしく思う。
昔はクラルテの父が話を聞いてくれた。どうでもいいこやその日にあった嬉しいこと悲しいことを子供みたいに話したのを思い出す。
「ありがとう。お話できることがあるといいのだけれど」
「それはお兄様が作るから大丈夫よ。お兄様のエスコートに任せたらいいわ」
クラルテはエスコートと聞くだけで心が躍る。デートをエスコート。想像がつかない言葉とベランジェを過ごす明日がさらに楽しみになる。
「ずっと聞いてみたかったのだけれど、いいかしら? お兄様って、クラルテさんの前ではどんな感じ?」
クラルテはベランジェを思い浮かべる。少し強引な所もあるが、クラルテを想っている気持ちが伝わってくる。クラルテはベランジェを思い浮べならがうっとりしている。
「優しくてかっこよくて素敵な方よ。少し強引なところとかーー」
クラルテは故郷でベランジェと過ごした時のことを思い出し、顔を緩ませる。
「そうなのね。いいこと聞いたわ」
ロズリーヌは微笑みながら話を続ける。
「うち、女性ばかりなのよ。女性が強い上に、数百年ぶりの男子の王位継承者だから重圧もすごくて色々頑張りすぎちゃうのよ。この前も討伐のため呪術者を追いかけて遙か南まで行っちゃうし。その時にクラルテさんと出会ったと言ってたわね」
初めて知ったベランジェのこと。王子様との婚約に浮かれていただけのように感じてしまい、ベランジェ自身のことを見ていなかったのかもしれない。
「わたし、ベランジェのこと全然知らなくて。それに呪術者のこともーー」
故郷ではあまり聞かなかった呪術者の存在。そんな怖い存在を相手にしているベランジェが心配になる。
確か故郷で会った時のベランジェは害獣駆除と言っていた。呪術者と言わなかったのはクラルテを怖がらせないために嘘を言ったのだろうか。
「王と魔術王の話は知っているかしら。魔術王に刃向かった王が倒されてしまった話。刃向かった王は何百年も前のこの国の王なのをご存じ?」
クラルテはうなずく。おとぎ話に近いくらい昔で現実にあったと信じられない話。誰も語らないが誰もが知っている話だ。
「何百年も前だから公にはしていないけど、城の人たちや国民の記憶から消えることがないの。クラルテさんと出会う前のお兄様はその歴史を少しでも消そうと討伐に躍起になっていたの。お兄様が南から怪我して帰ってきた時、怖かったの。今回は怪我だったけど、次はどうなってしまうのかと。でもクラルテさんが手当てしてくれたと聞いて、ご加護を受けたみたいで嬉しくなったのよ。しかも結婚すると言い出すし、お兄様はクラルテさんと運命を感じたのね」
妹として兄を心配している気持ちが伝わってくる。ベランジェは王子様としてどんな事を背負っているのか少し分かった。
「運命だなんて、そんな。わたし、ベランジェがそんなに大変なことを背負っているなんて知らなかった」
田舎娘を求婚しに来た王子様。夢のような事を現実にしてくれた王子様は夢であってほしい現実を少しでも塗り替えようとしている。
「わたしはベランジェに何ができるのかな」
一緒に戦うわけでもなくでもない、ただの田舎娘の自分に何ができるのだろう。
「クラルテさん、貴女はお優しい方だわ。お兄様にクラルテさんがいてくれたら安心ね。兄の事をよろしくお願い致します」
ロズリーヌは深々とお辞儀をする。クラルテは言葉にして伝えることができず、その場でうなずく。
その話が終わるとクラルテとロズリーヌの話は彼女の学院の話とクラルテの故郷の話になった。クラルテはロズリーヌが楽しい学院生活を送っているのを楽しそうに聞いている。ロズリーヌはクラルテが過ごしていた故郷の話を興味深く聞いている。
二人は楽しいお茶の時間を過ごし、明日に備えて早い時間にお開きになった。
クラルテは豪華な応接室でロズリーヌを待っている。ドアがノックされ、ロズリーヌが声をかけてくる。
「クラルテさん、わたくしよ。いらっしゃるかしら?」
クラルテはドアを開けると、ロズリーヌと上品な年配の男性が鞄を持ってロズリーヌの後ろに立っている。
「ごきげんよう。こちらの方は城でドレスなどをデザインする専属の仕立屋さんでデザイナー部門に所属されている責任者の方よ」
クラルテと仕立屋はお互いにお辞儀をする。
「クラルテさんの婚約パーティーのドレスと結婚式のウエディングドレスを担当してくださるわ。そのうち打ち合わせがあると思うけど」
「よろしくお願いします」
ドレスを作ってもらうなんて緊張してしまう。クラルテはもう一度お辞儀をする。
「普段着はお弟子さんたちが作っているのよ。どれも素敵だから見てみるといいわ」
仕立屋は鞄から様々な色とデザインの服を出してクラルテに見せる。淡い色を使った可愛らしい服や濃くハッキリとした色を使った大人っぽい服。
「ごめんなさい。どれも素敵だけど、どれがいいか分からない」
どれも素敵だが、クラルテは田舎の小さな村で育ったためファッションやお洒落がよく分からなかった。
「好きなお色は何でございましょう?」
仕立屋がクラルテに質問をする。クラルテは「ピンク」と答える。
「こちらのお洋服はいかがでしょう?」
仕立屋はフリルが多く淡いピンクの可愛らしいドレスを勧める。
「こんなに素敵なものをわたしが着ていいの?」
「もちろんよ。そのために選んでもらってるのだから。気に入ったかしら?」
クラルテは笑顔でうなずく。仕立屋が頭を深く下げて礼を言う。
「決定ね。きっと可愛いわよ」
「サイズや丈は問題なさそうですね。私はこれで失礼させていただきます」
仕立屋は熟練の経験で見ただけで洋服とサイズが合うか分かるようだ。
「今日はありがとう。助かったわ」
「ありがとうございます」
ロズリーヌに次いでクラルテも礼を言う。仕立屋は服を片付けてドアの前で一礼をして出て行った。
クラルテはロズリーヌのに誘われ、そのままこの応接室でお茶をすることになった。ロズリーヌがメイドを呼び、お茶を持ってきてもらった。
「お洋服が決まってよかったわ。クラルテさん。ここに来てから、お兄様と初デートよね!」
ロズリーヌは紅茶を飲みながら嬉しそうに話す。クラルテは初デートと言われ照れて紅茶を一口飲む。
「よかったら後でデートした時のお話聞かせてくれるかしら。楽しみに待ってるわ」
デートの様子を話すなんて照れて恥ずかしい。しかし嬉しかった話を聞いてくれる人がいる感覚を懐かしく思う。
昔はクラルテの父が話を聞いてくれた。どうでもいいこやその日にあった嬉しいこと悲しいことを子供みたいに話したのを思い出す。
「ありがとう。お話できることがあるといいのだけれど」
「それはお兄様が作るから大丈夫よ。お兄様のエスコートに任せたらいいわ」
クラルテはエスコートと聞くだけで心が躍る。デートをエスコート。想像がつかない言葉とベランジェを過ごす明日がさらに楽しみになる。
「ずっと聞いてみたかったのだけれど、いいかしら? お兄様って、クラルテさんの前ではどんな感じ?」
クラルテはベランジェを思い浮かべる。少し強引な所もあるが、クラルテを想っている気持ちが伝わってくる。クラルテはベランジェを思い浮べならがうっとりしている。
「優しくてかっこよくて素敵な方よ。少し強引なところとかーー」
クラルテは故郷でベランジェと過ごした時のことを思い出し、顔を緩ませる。
「そうなのね。いいこと聞いたわ」
ロズリーヌは微笑みながら話を続ける。
「うち、女性ばかりなのよ。女性が強い上に、数百年ぶりの男子の王位継承者だから重圧もすごくて色々頑張りすぎちゃうのよ。この前も討伐のため呪術者を追いかけて遙か南まで行っちゃうし。その時にクラルテさんと出会ったと言ってたわね」
初めて知ったベランジェのこと。王子様との婚約に浮かれていただけのように感じてしまい、ベランジェ自身のことを見ていなかったのかもしれない。
「わたし、ベランジェのこと全然知らなくて。それに呪術者のこともーー」
故郷ではあまり聞かなかった呪術者の存在。そんな怖い存在を相手にしているベランジェが心配になる。
確か故郷で会った時のベランジェは害獣駆除と言っていた。呪術者と言わなかったのはクラルテを怖がらせないために嘘を言ったのだろうか。
「王と魔術王の話は知っているかしら。魔術王に刃向かった王が倒されてしまった話。刃向かった王は何百年も前のこの国の王なのをご存じ?」
クラルテはうなずく。おとぎ話に近いくらい昔で現実にあったと信じられない話。誰も語らないが誰もが知っている話だ。
「何百年も前だから公にはしていないけど、城の人たちや国民の記憶から消えることがないの。クラルテさんと出会う前のお兄様はその歴史を少しでも消そうと討伐に躍起になっていたの。お兄様が南から怪我して帰ってきた時、怖かったの。今回は怪我だったけど、次はどうなってしまうのかと。でもクラルテさんが手当てしてくれたと聞いて、ご加護を受けたみたいで嬉しくなったのよ。しかも結婚すると言い出すし、お兄様はクラルテさんと運命を感じたのね」
妹として兄を心配している気持ちが伝わってくる。ベランジェは王子様としてどんな事を背負っているのか少し分かった。
「運命だなんて、そんな。わたし、ベランジェがそんなに大変なことを背負っているなんて知らなかった」
田舎娘を求婚しに来た王子様。夢のような事を現実にしてくれた王子様は夢であってほしい現実を少しでも塗り替えようとしている。
「わたしはベランジェに何ができるのかな」
一緒に戦うわけでもなくでもない、ただの田舎娘の自分に何ができるのだろう。
「クラルテさん、貴女はお優しい方だわ。お兄様にクラルテさんがいてくれたら安心ね。兄の事をよろしくお願い致します」
ロズリーヌは深々とお辞儀をする。クラルテは言葉にして伝えることができず、その場でうなずく。
その話が終わるとクラルテとロズリーヌの話は彼女の学院の話とクラルテの故郷の話になった。クラルテはロズリーヌが楽しい学院生活を送っているのを楽しそうに聞いている。ロズリーヌはクラルテが過ごしていた故郷の話を興味深く聞いている。
二人は楽しいお茶の時間を過ごし、明日に備えて早い時間にお開きになった。