【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?
陛下の鋭い指摘に「そのようなところです」と言葉を濁した。さすがに「離縁したい」と言われたなど、言葉にしたくなかったので誤魔化した。
歯切れの悪い返答に、陛下は怒るわけでもなくブルーノ王子に視線を向けた。王子は陛下とそっくりな深紅の瞳は、私を見返す。
「ぱぁてぃーをするから、ふじんも、きてほしい」
「ブルーノ! そうか。そうだな。急に呼び出すような形だと夫人も驚いてしまうことを失念していた。夫人が妊娠している可能性も考慮して、当日は座る場所や、休憩室も確保するだけではなく、護衛の数も必要だな。さすが私の子だ。なんと聡明で賢いのか」
「ちちうえなら、そうかんがえるとおもった」
「あははは、そうか。それは嬉しいな」
一気に子煩悩まっしぐら──父親の顔で、場の空気が和んだ。確かに要件も無く王城に呼び出すよりは、良いのかもしれない。だが離縁を考えている彼女が承諾してくれるだろうか。離縁、嫌だというか彼女と別れるなんて無理だ。
「数日後に王家主催のパーティーを行う。夫人と一緒に参加するように」
「陛下。……善処いたします」
そう答えながら、まだ仕事も始まっていないのに、もうナタリアに会いたくなった。思えば今日は行って来ますハグも、キスも無かったのだ。
ああ、帰りたい。
ふと王子の両手に灰色の毛玉のようなものが見えたが、気のせいだろうか。