【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?
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パーティー当日。
私は白を基調としたドレスで、レースの端の部分だけ黒と金の刺繍をふんだんに使った、とってもお洒落かつお金がかかっているのが分かる出来映えだった。お腹の赤ちゃんのとも考えてコルセットではないけれど、腰のラインがよく見える形のデザインにして貰えてよかったわ。
首元には光沢のある黒の宝石に、耳飾りは金と黒とシンプルな飾り付け。髪は編み込みでまとめてもらって、ダリアの生花を使った魔法の花で微かに発光して、敵意があると防護壁が展開する即席魔導具でもある。
「ああ、ナタリア。なんて美しいのだろう。妖精か、いや天使。女神にだって負けない」
「だ、旦那様だって、正装がかっこよすぎですわ」
グレーの貴族服に身を包み、コートの襟にはダリア形をしたラペルピンを付けている。ダリアの色は琥珀色で、私の瞳の色だ。夫婦揃ってお互いに自分の髪や瞳の色を付けているのは夫婦円満の証でもある。特に亜人族にとっては心から愛していないと、身につける物にも抵抗するらしい。
だからこそ周囲に見せつけるには、うってつけらしい。
「わあ」
心躍るオーケストラの演奏に、煌びやかなパーティー会場。輝くシャンデリアの下で、カラフルなドレスが目に入る。社交界は久しぶりだけれど、旦那様と肩にちょこんと乗っている小鳥さんがいれば心強いわ。
周囲の視線を受けつつ、私と旦那様はダンスホールに向かった。ダンスは得意ではないのだけれど、旦那様がリードしてくれるので、ちょっぴり緊張するがわくわくのほうが大きい。
今のところ注目を浴びてはいるだけで、特に変わったことも無かった。私は旦那様の金色の瞳を見つめる。射貫くような鋭い眼光だけれど、怖くはない。むしろ「大丈夫か」と心配してくれる。とても優しくて、ちょっと過保護な旦那様だ。しっかりとリードしてもらい、気づけば周囲なんて気にならないほど旦那様に夢中になる。
くるりとターンをする時だって旦那様に身を任せれば、私が完璧に踊っているように見えているだろう。旦那様はいつだって私に魔法をかけてくださるわ。