【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

「こ、国王陛下。本日は──」
「ああ、今は時間が惜しいから、挨拶は不要だ。さて、ブルーノ」
「はい。ちちうえ」

 国王陛下は抱っこしていたブルーノ王子をそっと下ろした。まだ四歳になったばかりなのに、凜としていてきっと将来は素敵な殿方になるだろう。正装もしっかり着こなしていて、ただ気になったのは両手に抱える灰褐色の毛玉だ。なんというか王子とは不釣り合いなものに見える。

「おはつにおめにかかります。ぶるーの・おるぶらいと・えいでんです」
「ブルーノ殿下、ご挨拶いただき光栄でございます。イグナート公爵の妻、ナタリアと申します」

 挨拶もしっかりとできている王子に感動しつつ私も挨拶を返したのだが、王子はどこかそわそわしている。王子と同じくらいの目線に合わせて屈んでいるのだけれど、何か言いたいことでもあるのかしら?

「ブルーノ殿下、私に何か話したいことでも?」
「はい……ほんじつは、ふじんに、かれをみてほしくて……」

 そう言って両手を私に差し出した。そこには毛玉ではなく震えてうずくまる小さな雀がいた。ボロボロでとても弱っている。私の肩に居る小鳥は何も反応しないので悪いものではないだろう。

 そっと羽根を撫でると、今まで震えていた灰褐色の雀がビクリと大きく動いた。顔をあげて眼光の鋭い瞳が私を射貫く。それは金色の瞳で見たことがある。

「イグナート旦那様?」
「──っ、ちゅんんん!」
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