【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

 基本的に【運命のツガイ】となる相手が、複数人いることはまずない。となれば考えられるのは、妻の子、つまり私の──!?

「へ、陛下。まさか、妻が妊娠し、それも殿下のツガイになる可能性がある……と?」
「そのまさかだ。どうやら息子は今日不思議な夢を見たようで、【運命のツガイ】に近々出会えること、そしてその母と子──つまり妊婦が危険な目に遭う可能性があるのだとか」
「なっ……」

 後頭部を強打されたような衝撃が走った。ナタリアと私の子に、危険が!?
 ふと今朝の妻の言葉が脳裏によぎる。

『その……、私旦那様と同じくらいに大切な……(赤ちゃん)ができたので、その……だから、私が守らないといけないの。そのためにも旦那様とはお別れしたほうが、旦那様のためでもあると思うのです』
『つまり……私以外に好きな男ができたと?』
『まあ、まだどっちだか分からないわ!』

 大切な人。てっきり異性だと思っていたが、私とナタリアの子供なら、私と同じくらい大切だと言われても納得できる。それに『まだどっちだか分からないわ』という発言。思い返せば、今日の妻はどこか様子がおかしかった。
 ジークが言っていたとおり、妊娠してネガティブになっている? いやナタリアは私のためと言っていた。これは──。

「王城にも妊娠した上級侍女、女官がいたのも、ブルーノは気づいたのだ。そしてその二人から話を聞くと、双方ともに今朝方妙な夢を見たという。詳細は分からなかったが、未来予知のような少し先の未来だとかで、その二人も近い未来事故や事件に巻き込まれる可能性があるから、と辞表を人事課に掛け合っていたのだ」
「夢……(ナタリアの様子がおかしかったのも、離縁を言い出したのも今朝だ。他の侍女と女官も退職を選んだ。……現状を変えることが未来を変えると思った? あるいは王都にいることで、身の危険を感じた?)」
「その様子を見るに、夫人も何か思うところがあったのかな?」
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