黒薔薇の悪女は、カピバラ侯爵様の餌付けに成功したらしい?
「あの……、ごめんなさい。私、ケリス様に酷いことをいっぱい言って傷つけた。……本当にごめんなさい……」
「レティーシャ……。うん……。傷つかなかったと言えば嘘になるけど、君が気持ちを吐き出す事で気が晴れるなら、受け入れようと思ったんだ」
「え? どうして……?」
「だって、君も傷ついているだろうから」
ケリスの言葉にドクリと胸が鳴った。
どうしてこの人は、私の隠してきた思いを見透かしてしまうのだろう。王太子の婚約者になるべく、幼少の頃から心を殺して厳しい教育を受けてきた。
逃げることも、泣くことも許されない。でも選ばれなかった。両親の失望した顔は忘れられない。
私は何の為に今まで努力してきたの?
私は必要ないの?
私はこれからどう生きていけばいいの?
行き場のない感情の捌け口として、ケリスに罵詈雑言を浴びせていた。完全な八つ当たりだ。
「……ケリス様は、優しすぎますよ……」
目から温かいものが流れ落ちた。
子供の頃は両親に隠れて一人で泣いた。そのうち涙は出なくなって、もう枯れたのかと思っていたのに。拭っても拭っても溢れてくる。
「おっ、お見苦しいものをお見せして、も、申し訳……ございません……。あ、れ? 止まんなっうっ……」
ケリスがハンカチを差し出してくれた。
「無理は良くない。大丈夫だ。前髪があって良く見えないから」
ケリスの目はまた前髪に隠れている。良く見えないって、いつもどうやって見ているの? 嘘ばっかり。心が温かくなる。
「ふふっ。ありがとう……ございます……」
ハンカチを受け取ると、私は心ゆくまま泣くことにした。
「レティーシャ……。うん……。傷つかなかったと言えば嘘になるけど、君が気持ちを吐き出す事で気が晴れるなら、受け入れようと思ったんだ」
「え? どうして……?」
「だって、君も傷ついているだろうから」
ケリスの言葉にドクリと胸が鳴った。
どうしてこの人は、私の隠してきた思いを見透かしてしまうのだろう。王太子の婚約者になるべく、幼少の頃から心を殺して厳しい教育を受けてきた。
逃げることも、泣くことも許されない。でも選ばれなかった。両親の失望した顔は忘れられない。
私は何の為に今まで努力してきたの?
私は必要ないの?
私はこれからどう生きていけばいいの?
行き場のない感情の捌け口として、ケリスに罵詈雑言を浴びせていた。完全な八つ当たりだ。
「……ケリス様は、優しすぎますよ……」
目から温かいものが流れ落ちた。
子供の頃は両親に隠れて一人で泣いた。そのうち涙は出なくなって、もう枯れたのかと思っていたのに。拭っても拭っても溢れてくる。
「おっ、お見苦しいものをお見せして、も、申し訳……ございません……。あ、れ? 止まんなっうっ……」
ケリスがハンカチを差し出してくれた。
「無理は良くない。大丈夫だ。前髪があって良く見えないから」
ケリスの目はまた前髪に隠れている。良く見えないって、いつもどうやって見ているの? 嘘ばっかり。心が温かくなる。
「ふふっ。ありがとう……ございます……」
ハンカチを受け取ると、私は心ゆくまま泣くことにした。