黒薔薇の悪女は、カピバラ侯爵様の餌付けに成功したらしい?
7 忘れてた
「王家主催の舞踏会のことなんだが……」
夕食後、紅茶を飲んでいるとケリスが言った。
「舞踏会ですか? ……あっ」
言いかけて思い出した。
玲奈の記憶が戻る直前に『絶対に参加しませんわ!』と言い放ったことを。その後すっかり忘れていたのだが、再来週に迫っていた。
「やはり参加することは難しいだろうか?」
ケリスは躊躇いがちに尋ねてくる。
「いいえ、参加いたしますわ」
「え? 本当か? そうか……」
ケリスは安堵したように、息を吐いた。
「あ、でも、私、準備は何も……」
舞踏会に参加するためにはドレスやアクセサリーを新調するのだが、今から間に合うだろうか。
「よ、用意はしてある。もしかしたら、参加してくれるのではないかと期待して」
ケリスは照れたように頬を掻いた。