黒薔薇の悪女は、カピバラ侯爵様の餌付けに成功したらしい?
9 許さない
折角なので食事を楽しみましょう。
ケリスがおすすめしてくれたローストビーフや、ローストチキンの他にも、フリッターや、サンドイッチなどもある。色々な種類のスイーツも並んでいた。
どれも美味しそうで、目移りしてしまう。全部少しずつ食べたいけれど、コルセットがきつくて、あまりお腹に入らないかもしれない。残念だ。
まずはローストビーフを給仕係に頼んで切り分けてもらうことにした。
「あら、レティーシャ様ではありませんか?」
高い女性の声に呼ばれて振り返る。そこには同じ王太子の婚約者候補だった、侯爵令嬢のローラが立っていた。
ローラは私より華奢で、可愛らしい雰囲気なので、淡いピンクドレスがよく似合っている。
「ローラ様、ごきげんよう」
「レティーシャ様、体調がお悪かったんですって? もう大丈夫ですのぉ?」
ローラは舌足らずな話し方をする。
「えぇ、おかげさまで。もう平気ですわ」
私は曖昧に微笑んだ。
「ご無理をなさらないで。私、レティーシャ様が病むのもわかりますのよぉ。だって、殿下の婚約者は確実だと言われていましたのに、選ばれなかったのですから。レティーシャ様が相応しいと思っていましたのに……」