黒薔薇の悪女は、カピバラ侯爵様の餌付けに成功したらしい?
3 お散歩しましょう
「ケリス様〜。早く早く、こっちですよ〜」
初夏の朝はまだ涼しくて、散歩するには良い気候だ。
色とりどりの花々が咲き乱れる庭園を一周した後、薔薇園の中にあるガゼボに向かった。
「はぁ、はぁ、ま、待ってくれ、レティーシャ。こんなに速歩きで散歩なんてっ、はぁ、はぁ」
ケリスがやっと追いついてきて、膝に両手を付いて息を整える。風で前髪が煽られそうになると、慌てて両手で直していた。
「ケリス様、お疲れ様でした。ここで朝食にしませんか? テーブルへどうぞ」
侍女に頼んであったので、ガゼボに着くとテーブルセッティングはすでに出来ていた。
「あ、あぁ。はぁ、はぁ……」
ケリス様はまだ膝が笑っているようだ。おぼつかない足取りでテーブルまで行くと、盛大な溜息をつきながら腰を下ろした。
その動作が微笑ましい。カピバラ侯爵様に癒やされる!
「ケリス様。まず、こちらをお飲みください」
私の合図で侍女が透明のグラスに、緑色の液体を注いでくれる。
「んっ? な、なんだ、これは……?」
「スムージーという飲み物です。ケリス様に飲んでいただきたくて私が作りました」
私がニッコリ笑うとケリスの顔が引きつる。