黒薔薇の悪女は、カピバラ侯爵様の餌付けに成功したらしい?
6 優しすぎる人
ケリス様改造計画は順調に進行中。
ケリスの身体も一回り細くなって、フェイスラインもすっきりしてきた。
そろそろ違うアプローチをかけてもいい時期かもしれない。
玲奈の時はフィットネススタジオで、エアロビもしていた。こちらでやるダンスとはまた違う動きでいいかも。
「ケリス様。エアロビをやりましょう!」
朝食の野菜サンドイッチにかぶり付いているケリスに声をかけた。
「え、あ? えあ……?」
「お手本をお見せしますね。結構、楽しいんですよ〜」
椅子から立ち上がると、ガゼボの下に降りた。お散歩用の、ヒールの低い靴とシンプルなドレスだから、少しくらい動いても大丈夫だろう。
「リズムをとって、足踏み! はい、はい、はい!」
私は足踏みをしながら、拳を握って、交互に頭上に突き上げる。次は横にステップ、と動いた時、足がもつれてしまった。
「え、え、ひゃっ」
まずい。転んでしまうわ。思わず目を閉じた。
転んだ衝撃はあったが地面の硬さではなくて、これって、この温もりは……。
「ふぅ、大丈夫?」
耳元でケリスの声が聞こえる。
目を開けると、尻もちをついたケリスの上に乗っていて、抱きしめられている状態だった。
「だ、だ、大丈夫ですわ。あ、あ、ありがとうございますっ」